知財高裁による審決取消訴訟の判決をピックアップして掲載しています 

平成20年(行ケ)第10439号審決取消請求事件


主文

1 特許庁が不服2008-3312号事件について平成20年10月15日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

1 本件は,原告が下記本願商標につき平成19年1月22日付けで登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。

2 争点は,上記出願に係る下記(1)の本願商標は下記(2)の引用商標と類似するか(商標法4条1項11号),である。

(1) 本願商標

・商標

・指定商品

第9類「眼鏡,眼鏡枠」

(2) 引用商標

・商標・指定商品第9類「眼鏡」

第14類「時計」

・登録日平成5年8月31日

・商標権者 サッポロ都市開発株式会社

第3当事者の主張

1 請求の原因

(1) 特許庁における手続の経緯

原告は,平成19年1月22日,前記内容の本願商標につき商標登録出願(商願2007-003996号。甲59)をしたが,拒絶査定を受けたので,平成20年2月13日付けで不服の審判請求をした。

特許庁は同請求を不服2008-3312号事件として審理した上,平成20年10月1日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成20年10月28日原告に送達された。

(2) 審決の内容

審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商標は引用商標と類似し指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似であるから,商標法4条1項11号により登録を受けることができない,というものである。

(3) 審決の取消事由

しかしながら,審決は,次のとおり違法なものであるから,取り消されるべきである。

ア 取消事由1(本願商標についての認定の誤り)

(ア)本願商標が常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情が見出し得ないとした認定の誤り

a 審決は,「本願商標は,…『Factory 900』の文字を横書きしてなるものであるところ,これを構成する『Factory』と『900』とは,欧文字と数字という異種文字からなり,かつ,これらが結合して特定の意味合いを生ずるものとはいえず,常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情も見出し得ないものである。」(2頁19行~23行)と認定している。

b しかし,本願商標は,「Factory 900」を同一の書体(MS明朝体)で同一のフォントサイズ及び間隔で記載したものであり,特別冗長というわけでもない。また,甲8~56で立証されているように,本願商標は著名性を獲得しており,本願の指定商品である眼鏡及び眼鏡枠の取引者及び需要者は「Factory900」全体を見て商品を識別しているものであるから,一体不可分として把握すべき特段の事情があるといえる。

特にインターネットブログには,例えば,甲48の「3Dプレスによる立体成形技術はこのFactory 900にしかないそうで滑らかにつながった特徴的な曲面がこのブランドならではの魅力だそうですいやぁいい感じです」との記載,甲49の「今回購入したのは『Factory900 fa092 』です!! 友人がかけていたメガネがあまりに格好良くて思わずどこで買ったのか聞いてしまいました!?」との記載,甲53の「今回は,デザイン重視でFactory900っていうファクトリーブランドにしました」との記載,甲54の「先日東京にて購入したFactory900の眼鏡です。非常に立体的でインパクトがあります。カラーもありそうでない透明度が高いグレー。良い買い物をしました。」との記載等のように,本願商標とともに原告の商品のすぐれたデザイン性や機能性について記載されている。また,「Factory」のみを取り出して原告の商品として紹介しているインターネットサイトなどはなく,現実の取引において殊更「Factory」を取り出して認識されているといった事情もないことから,「Factory900」全体で一体不可分として認識されているといえる。

c この点について審決は,「…請求人の提出した証拠によれば,本願商標が使用された眼鏡が,いくつかの新聞,雑誌,小売店のホームページで紹介されていること,眼鏡の展示会である『IOFT』において,『アイウエア・オブ・ザ・イヤー』を2003年から2005年まで3年連続で受賞(2005年にはグランプリを受賞)したことが認められるとしても,これらの証拠によっては,本願商標に接する取引者,需要者が,これを常に一体不可分のものとして把握するとまで本願商標が著名なものとなっているとは認めることはできず,また,職権をもって調査するも,そのような証左を発見することはできなかった。」(4頁9行~17行)としている。

d そこで,原告は,上記甲8~56の内容を補強するために,甲63(社団法人福井県眼鏡協会が発行した証明書),甲64(福井県眼鏡工業組合が発行した証明書),甲65(福井県立歴史博物館館長の証明書),甲66(IOFT事務局長の証明書)を提出する。

e そもそも,眼鏡という商品は,通常は需要者の視力にあったものを購入する必要性から,眼鏡の専門店で取り扱われるケースがほとんどであり,テレビコマーシャルなどにおいても眼鏡の販売店の名称が宣伝される場合がほとんどである。そして,眼鏡を購入する需要者の多くは,購入する販売店のみを選択して,その販売店に展示されている眼鏡の中から気に入ったデザインのものを購入することが多い。このことから,販売店を選択することはあっても,眼鏡及び眼鏡枠のブランド名を選択して眼鏡を購入する需要者は稀である。眼鏡及び眼鏡枠のこのような取引実態からすると,本願商標は,少なくともブランド名から購入する眼鏡及び眼鏡枠を選択するコアな層によく知られた商標となっている。

f したがって,本願商標が常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情が見出し得ないとした審決の認定は誤りである。

(イ)本願商標中の「900」の数字部分が,商品の型式,規格等を表示するための記号,符号と認識し把握されるに止まるとした認定の誤り

a 審決は, 本願商標について,「…その構成中の『900』の数字は,一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号,符号として商取引上類型的に使用されているのが実情であって,本願の指定商品を取り扱うこの種業界においても例外でなく,3桁の数字が取引上普通に使用されていることが,以下のインターネット情報からも裏付けられるところである。」(2頁24行~28行)と認定している。

b 確かに,3桁程度の数字が自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号,符号として商取引上類型的に使用されている例はあるが,必ずしもそのような場合ばかりではなく,本願商標のように需要者の間で数字部分を含む商標全体として広く認識されている場合などは,その3桁の数字も含んで自他商品識別機能・出所表示機能を発揮するものである。

c この点について,インターネットウェブページ「眼鏡Web」の「メガネ・ブランド別お問い合わせ先一覧」(甲73)によると,末尾に数字を有する眼鏡ブランドとして,タケオ365(TAKEO de 365),セルッティ1881(CERRUTI1881),スーパーメモリー21(Super memory 21),コレクション2000(COLLECTION 2000) ,フォーナインズ(999.9)が挙げられている。また,「TEAM291 本部」のインターネットウェブページ(甲75)には,眼鏡ブランドとして「THE291」が掲載されている。このように,末尾の3桁程度の数字であっても,商標の一部として自他商品識別機能・出所表示機能を果たし得る。特に「999.9」(甲74)や「THE291」(甲75)等は,数字の部分が商標の主要な部分を占めており,3桁程度の数字であっても明らかに自他商品識別機能・出所表示機能を発揮し得ることがわかる。なお,「THE 291 」「TAKEO de 365」「Super memory21」は,商標登録されている(甲77~79)。

d また,「Factory」は「製造所,工場」といった意味を有する英語として需要者,取引者に知られているものであるが,眼鏡等の製品に「○○Factory」「Factory○○」等の商標が付加された場合,これに接した取引者及び需要者は「製造所,工場」との意味と相まって「○○という者が製造した商品」又は「○○という商品を製造する工場」を表わすと理解するものであり,「Factory」自体が十分に識別機能を発揮するものではない。

類似群コード23B01(眼鏡,眼鏡枠)を指定商品として「ファクトリー」を含む商標を検索すると,34件出願されており(甲72),出願されていない商標も多数存在することを考えると,眼鏡,眼鏡枠の取引業界において「Factory」又は「ファクトリー」の文字を用いることは珍しいものではないことがわかる。そして,「Factory」等を含んで登録されている商標の例を見ると,「G-FACTORY」,「P-Factory」等のように,単純な文字と「FACTORY」を組み合わせたものや「GLASSFACTORY」,「アイズファクトリー\eye'sfactory」等のように眼鏡を表す普通名称と「FACTORY」又は「ファクトリー」を組み合わせたものが登録されている。

以上のことから,「Factory」の語は,眼鏡又は眼鏡枠を指定商品とする場合には,識別力がないか又は微弱であるといえる。

e 通常であれば識別力を発揮し得ないような単純な文字や普通名称であっても,「Factory」のような識別力がないか又は微弱である言葉と組み合わせる場合には,需要者はそれぞれを分離して認識しているのではなく,商標全体として認識しているものであり,全体として称呼及び観念を想起するものである。

仮に「Factory」又は「ファクトリー」の部分に識別力があり,他の部分には識別力がないとすると,上述のような商標は全て類似として商標法4条1項11条の趣旨から並存し得ないと考えられるが,それぞれ登録されている。

f したがって,本願商標中の「900」の数字部分が,商品の型式,規格等を表示するための記号,符号と認識し把握されるに止まるとした審決の認定は誤りであり,「900」の部分は「Factory」と組み合わさって全体として一連の称呼及び観念を想起するものである。

(ウ) 以上のように,本願商標はその著名性から「Factory 900」全体で一体不可分として認識されており,本願商標中の「900」部分は単に商品の型式,規格等を表示するための記号,符号として用いられているものではなく,商標の一部として自他商品識別機能・出所表示機能を果たすものであり,商標全体として自他商品識別機能,出所表示機能,品質保証機能,広告宣伝機能を果たしているものである。したがって,審決における「…本願商標は,その構成文字全体に相応して『ファクトリーキューヒャク』又は『ファクトリーキューゼロゼロ』の一連の称呼が生ずる他に,『Factory』の文字部分に相応して『ファクトリー』の称呼及び『工場』の観念をも生ずるものである。」(3頁16行~19行)との認定は誤りである。

イ 取消事由2(引用商標についての認定の誤り)

(ア)審決は,「…引用商標2(判決注:本件の引用商標)は,別掲に表示するとおり,上段にやや小さく『SAPPORO』の文字を表示し,その下段に,上段の文字よりも大きく角張った書体で『Factory』の文字を表示してなるものであるところ,『SAPPORO』の文字と『Factory』の文字とは,段を異にする他,その書体及び文字の大きさを異にするため視覚上分離して観察されるばかりでなく,これらが常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情も見出し得ないものである。また,上段の『SAPPORO』の文字は,北海道の道庁所在地の地名である『札幌』を容易に理解させるものであるところ,このような地名は,一般に,商品の産地又は販売地を表すものとして普通に使用されているのが実情である。」(3頁20行~29行)と認定している。

(イ)しかし,「サッポロファクトリー」は,引用商標の商標権者サッポロ都市開発株式会社が管理している,北海道札幌市の商業施設・観光地として著名であることから,殊更「Factory」の文字を抜き出して分離して類否判断されるものではない。前述したとおり「ファクトリー」又は「Factory」の文字は,商標の一部として眼鏡及び眼鏡枠の業界では多数用いられているものであり,単に「Factory」のみでは誰の商品に係る商標であるか不明であるのに対し,「SAPPORO Factory」全体でみると,北海道札幌市の商業施設・観光地として理解できるものであるから,引用商標は「SAPPORO Factory」全体として称呼及び観念を想起するものであり,殊更「Factory 」のみを抜き出して称呼及び観念を想起するものではない。

(ウ)引用商標においてアルファベットで横書きした「SAPPORO」の文字は,審決において示されるように,北海道の道庁所在地の地名である「札幌」を容易に理解させるというよりも,引用商標の出願人であるサッポロビール株式会社を想起するものである。引用商標の商標権は,サッポロビール株式会社から恵比寿ガーデンプレイス株式会社を経て,サッポロ都市開発株式会社に移転しているが,全てサッポロホールディングス株式会社の子会社又は孫会社であり,実質的には同一である。

サッポロビール株式会社は,ビール等の大手メーカーであり,少なくとも日本国内においては相当有名なものであるので,眼鏡,眼鏡枠のようにビール等の飲料品に類似しない商品であっても「SAPPORO」の文字を含む商標に接した需要者・取引者にとっては,サッポロビール株式会社と関連するものとの認識を持つものである。したがって,「SAPPORO」の部分に識別力がないとする審決の認定は誤りである。仮に審決で示すように「SAPPORO」の部分が商品の産地又は販売地を表すものであるとすると,商品の品質に誤認が生じるおそれ(商標法4条1項16号)から指定商品を「札幌において生産された眼鏡,眼鏡枠」等に限定する必要があるのに対して,引用商標ではそのような限定がなされているものでもない。

(エ)以上のとおり,審決において,引用商標は,「Factory」の文字部分に相応して「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずるものであるとした認定は誤りであり,引用商標は「SAPPORO Factory」との一連の文字から「サッポロファクトリー」との称呼を奏するものであり,北海道札幌市の商業地・観光地の観念を想起させるものである。

ウ 取消事由3(本願商標と引用商標との類否判断の誤り)

前記ア,イで述べたところからすると,本願商標と引用商標とは,外観はもちろんのこと,称呼及び観念においても共通するものではないので,出所について混同するおそれはなく,非類似の商標というべきである。したがって,商標法4条1項11号に該当するとして,拒絶査定を維持した審決は取り消されるべきである。

2 請求原因に対する認否

請求原因(1)(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。

3 被告の反論

(1) 本願商標と引用商標との類否について

ア構成部分が複数存在する商標の類否判断については,最高裁昭和37年(オ)第953号・同38年12月5日第一小法廷判決(民集17巻12号1621頁)が,「簡易,迅速をたっとぶ取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,1個の商標から2個以上の称呼,観念の生ずることがある。」旨判示している。

各構成部分が取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないと判断され得る商標の構成としては,文字と図形との結合,形容詞的文字(商品の品質等を表示する文字)との結合,大きさを異にしてなる文字との結合,長い称呼を有するためその一部分によって簡略化される可能性がある文字との結合,文字の種類・書体を異にするものの結合などがある。

イ 本願商標は,「Factory900」の文字を横書きしてなるものであるところ,その構成が,欧文字と数字という異なる種類の文字からなることから,本願商標は,「Factory」の文字と「900」の数字とから構成されているものと直ちに看取,認識されるものである。

そして,本願商標の構成中の「900」の数字の部分についてみると,数字は,一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号又は符号として,取引上,類型的に採択・使用されているものであり,文字と数字とが結合された商標に接する取引者,需要者にあっては,当該数字部分を上記の記号又は符号と認識し把握されるに止まるのであるから,本願商標の構成中の「900」の数字自体としては,自他商品の識別標識としての機能を欠くものである。

一方,本願商標の構成中「Factory」の文字は,「工場」の意味を有する英語であることが一般に広く知られているものであり,当該文字は,本願商標の指定商品との関係において,商品名であるとか,商品の品質等を記述的に表示する語といえるものではなく,十分に自他商品の識別標識として機能を有するものである。

そうすると,本願商標に接する取引者,需要者は,数字以外の文字部分である「Factory」に着目し,当該部分から生ずる「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をもって取引に資することも少なくないというべきである。

このことは,文字と数字とが結合した商標において,その文字部分が自他商品の識別機能を果たすとした判決(東京高裁昭和53年(行ケ)第24号・同53年6月28日判決)からも首肯できるものである。したがって,本願商標は,「Factory」の文字部分に相応して,

「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずるものである。

ウ 他方,引用商標は,上段の「SAPPORO」の文字と下段の「Factory」の文字とからなるものであるところ,これらの文字は,前記第2のとおり,上段と下段に明確に区別されて配置されているほか,上段の「SAPPORO」の文字は,全て大文字により一般的なゴシック体で表されているのに対し,下段の「Factory」の文字は,第1文字目を大文字,その余を小文字として角張った書体で表され,上段の「SAPPORO」の文字に比して4倍ほどの大きさで,かつ,かなり太い線で表されていることから,上段の「SAPPORO」の文字と下段の「Factory」の文字は,取引において視覚上分離して観察され,しかも,下段の「Factory」の文字が,上段の「SAPPORO」の文字に比べてかなり目立ち,引用商標に接する取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。

加えて,上段の「SAPPORO」の文字は,北海道の道庁所在地であり著名な観光地といえる「札幌」の表音を欧文字で表記したものと容易に理解されるものであり,商品の取引において,その商品の産地,販売地を示すために地名を欧文字で表示することが一般的に行われていることから,引用商標に接する取引者,需要者は,その構成中の「SAPPORO」の文字を商品の産地又は販売地であると認識するに止まるものであり,当該文字以外の部分である「工場」の意味を有する「Factory」の文字に着目し,当該部分から生ずる「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をもって取引に資することも少なくないというべきである。

なお,著名な地名については,商品の産地,販売地として認識されるものであって,多くの場合,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものと見るべきとするのは,過去の多くの判決によっても判示されているところである(東京高裁昭和52年(行ケ)第184号・同53年6月28日判決等)。したがって,引用商標は,「Factory」の文字部分に相応して,「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずるものである。

エ 以上のとおり,本願商標及び引用商標は,ともにその構成全体を一体としてのみ把握されるものではなく,それぞれ,その構成中の「Factory」の文字部分に相応して,「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずるものである。

また,本願商標中の「Factory」の文字部分と引用商標中の「Factory」の文字部分とは,後者がデザイン化されている点で差異はあるとしても,英単語として共通するものであり,外観上,近似した印象を与えるものである。

してみれば,本願商標と引用商標とは,「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念を共通にし,外観においても近似した印象を与える類似の商標というべきである。

(2) 取消事由1に対し

ア「本願商標が常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情が見出し得ないとした認定の誤り」の主張につき

(ア)原告は,「本願の指定商品である眼鏡及び眼鏡枠の取引者及び需要者は,『Factory900』全体を見て商品を識別しているものである。」旨主張するが,ここでいう「取引者及び需要者」とは,本願の指定商品である「眼鏡,眼鏡枠」の製造販売者である取引者と,それらの購入者である最終消費者までを含む需要者というべきである。

そして,この「眼鏡,眼鏡枠」の需要者は,年代別や性別による幅広い需要者層からなり,その購入目的も,近視,老眼等の視力の矯正以外にファッション目的での需要者層も存在し,さらに,購入価格に応じた需要者層にも分かれる等,その需要者の範囲は極めて広範かつ重層的なものであり,その数は,日本全国において約6000万人ともいわれているところである。

しかして,原告提出の証拠によっては,以下のとおり,本願商標に接する取引者及び需要者が,これを常に一体不可分のものとして把握するとまで,本願商標が著名なものとなっているということはできないから,本願商標が常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情があるということはできない。

a 甲8~10

甲8は,「メガネの国際総合展」(IOFT)における眼鏡のコンテストである「アイウェア・オブ・ザ・イヤー2003」,「同2004」及び「同2005」の3度にわたる表彰状及びその表彰で受賞した眼鏡が表示された写真であるところ,それぞれに「原告の名称」,本願商標又は「ファクトリー900」等の文字並びにコンテストの主催者である「日本医用光学機器工業会」他2者の名称及びその代表者名等が表示されている。また,甲9及び10は,「メガネの国際総合展」に関するウェブページであり,「開催概要」,「出展のメリット」,「IOFTアイウェア特集を企画している媒体一覧(一般紙・業界専門紙誌)」及び「併催イベント」などの記事が掲載されている。

しかし,これらの証拠からは,「Factory900」の名称の眼鏡が,当該「メガネの国際総合展」において表彰され,そのことが一部の雑誌や業界紙において報道されたことは確認できるが,このことをもって,その受賞の事実が,どの程度の範囲における眼鏡の取引者及び需要者に認識されていたかを確認することはできないものである。

b 甲12,13

甲12,13は,「メガネの国際総合展」(IOFT)における「アイウェア・オブ・ザ・イヤー」において,原告の「Factory900」が受賞したとの記事が掲載された福井県眼鏡協会の会報と認められる「眼鏡協会だより」であるが,これらの会報は,会員向けに頒布されているものであるから,その会報の読者は,当該会員にとどまるものである。

c 甲14,15

甲14は,原告の「Factory900」を紹介した「日経流通新聞」の記事であり,甲15は,原告の「Factory900」を紹介した「週間眼鏡新聞」の記事であるが,これらの新聞は,消費と流通,マーケット情報に特化した専門誌及び業界紙であるから,これらの新聞の読者は,一部の眼鏡の取引者及び需要者に限られるものである。

d 甲11,17~27

甲11,17~27は,いずれも,原告の「Factory900」を紹介した眼鏡関連の雑誌や男性週刊誌等であるから,これらの雑誌の読者は,一部の眼鏡の取引者及び需要者に限られるものである。

e 甲28~56

甲28~30は,代表的なインターネットの検索サイトにおいて,原告の「Factory900」が多数ヒットしたことを,甲31~46は,多数の小売店のウェブページにおいて,原告の「Factory900」が紹介されていることを,甲47~56は,個人のブログ等において,原告の「Factory900」が紹介されていることを,それぞれ示しているものであるが,インターネットでこれらの記事に接するためには,特定の目的のために「Factory900」等のキーワードを事前に得た上で意識的に検索する必要があると考えられるから,近年におけるインターネットの普及度を考慮したとしても,そのような操作の結果得られた情報である上記記事により,本願商標の著名性を判断することは適切でない。

f 甲63,64,66

甲63は社団法人福井県眼鏡協会の,甲64は福井県眼鏡工業組合の,甲66はIOFT事務局の,それぞれの代表者名の記名押印のある証明書であるところ,いずれの証明書にも,原告の「Factory900」が,「メガネの国際総合展」(IOFT) のコンテストである「アイウェア・オブ・ザ・イヤー」において,2002年から2004年の3年連続で入賞し,特に,2004年にはグランプリを受賞したこと,「需要者の間に広く認識されていることを証明する」との文面が記載されている。

しかし,この「需要者の間に広く認識されていることを証明する」との文面のみでは,その需要者の具体的な範囲等を確認することができないものであり,客観的な証拠とはいえない。

そして,これらの証明者の多くは,本願の指定商品「眼鏡,眼鏡枠」の取引者に関係する団体等であるから,これらの証明書によって,本願商標の著名性を判断することは適切でない。

g 甲65

甲65は,福井県立歴史博物館館長名の記名押印のある証明書であるが,当該証明書は,単に,原告の商品を収蔵していることを証したものであって,本願商標が取引者及び需要者の間に広く認識されているとの証明書ではない。

(イ)また,原告は,「『Factory』のみを取り出して原告の商品として紹介しているインターネットサイトなどはなく,現実の取引において殊更『Factory』を取り出して認識されているといった事情もないことから,『Factory900』全体で一体不可分として認識されているといえる。」と主張しているが,このことは,原告が主張する実情についての現在の見解を述べているに過ぎず,本願商標が現在及び今後において,その各文字部分が取引者及び需要者に分離して看取されるか否かとは,別の問題であるから,原告の主張は失当である。

(ウ)さらに,原告は,「眼鏡及び眼鏡枠の取引実態からすると,本願商標は,少なくともブランド名から購入する眼鏡及び眼鏡枠を選択するコアな層によく知られた商標となっている。」と主張するが,原告が主張する眼鏡及び眼鏡枠の取引実態は,原告の見解に過ぎず,何らの根拠があるものではない。そのような取引実態を前提としたブランド名から購入する眼鏡及び眼鏡枠を選択するコアな一部の層による認識により,本願商標の認定を行うことは,適切ではない。仮に原告が主張するような眼鏡及び眼鏡枠の取引実態があるとしても,それは,ある一面を捉えた一部の実情といえるものである。そして,本願商標全体で一体不可分なものと認識するという需要者の層は,特殊な一部の層といえるものである。

(エ)したがって,本願商標が常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情を見出し得ないとした審決の認定に誤りはない。

イ「本願商標中の『900』の数字部分が,商品の型式,規格等を表示するための記号,符号と認識し把握されるに止まるとした認定の誤り」の主張につき

(ア)本願商標中「900」のような数字の部分については,一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号又は符号として,取引上,類型的に採択・使用されているのが実情であって,本願の指定商品「眼鏡,眼鏡枠」を取り扱うこの種業界においても例外ではなく,以下のように3桁の数字が,取引上,普通に採択・使用されている事実がある。

a 雑誌等の記載によれば,3桁の数字が,「SS-805」及び「SS-804」並びに「CLR-100」及び「CLR-400」(甲5,6),「BM-008col.l」,「BM-006col.2」及び「BM-007col.4」(乙4),「JN-47101」,「JN-47201」及び「JN-47002」(乙5),「S-131」,「S-132」,「S-133」及び「S-134」(乙6),「FF-105」,「FF-106」及び「FF-107」(乙7),「CF560」,「CF561」,「CF715」,「CF718」,「CF564」,「CF717」,「CF563」及び「CF716」(乙8),「Ca-101」,「Ca-102」,「Ca-103」,「Ca-104」及び「Ca-105」(乙9),「V740」,「V741」,「V736」,「i001」及び「V205」(乙10)並びに「M170」,「M171」,「M174」,「M906」及び「M909」(乙11)のように使用されている。

b 株式会社アイ・トピアのウェブサイトには,「MEGANESTORE/メガネストアー」の見出しの下に,「商品情報」の「juniorジュニア」の区分に,「品番/キッズラビット800」や「品番/キッズラビット700」の記載があり,また,「Mensメンズ」の区分に,「コンディーレ001」や「フウライボウ12-200」の記載がある(甲3,4)。

c 株式会社メガネスーパーのウェブサイトには,「メガネスーパー」の見出しの下に,「メガネ」の項には,「コラボレーションモデル」の「AYAUETO(上戸彩プロデュース)」の区分に,「アヤ・ウエト573」や「アヤ・ウエト565」の記載がある(甲7)。

d 株式会社三城のウェブサイトには,「メガネ・補聴器・コンタクトレンズメガネパリミキメガネの三城」の見出しの下に,「商品情報」の「フレーム・レンズ」の項において「EDGE」の商品を紹介しているところ,その商品の品番等として,「EDGE 008 」,「EDGE 009」,「EDGE 010」,「EDGE 018」,「EDGE 019」及び「EDGE 021」の記載がある(乙12)。

e 株式会社三城のウェブサイトには,「メガネ・補聴器・コンタクトレンズメガネパリミキメガネの三城」の見出しの下に,「商品情報」の「フレーム・レンズ」の項において「LAPHAS」の商品を紹介しているところ,その商品の品番等として,「LAPHAS 935」,「LAPHAS 936」, 「LAPHAS 938」,「LAPHAS 939」及び「LAPHAS 940」の記載がある(乙13)。

f 株式会社エンジョイアイ・ウェアのウェブサイトには,「enjoy eye wear エンジョイアイウェア」の見出しの下に,「SPORT301」の記載がある(乙14)。

g 株式会社アイ・トピアのウェブサイトには,「MEGANE STORE/メガネストアー」の見出しの下に,「商品情報」の「LADIES」の項において「彩美(サイビ)」の商品を紹介しているところ,その商品の品番等として,「品番/彩美(サイビ)2725」の記載がある(乙15)。

h 株式会社アイ・トピアのウェブサイトには,「MEGANE STORE/メガネストアー」の見出しの下に,「商品情報」の「LADIES」の項において「HiToMi ヒトミ」の商品を紹介しているところ,その商品の品番等として,「品番/ヒトミ7210」の記載がある(乙16)。

(イ)以上のとおり,本願商標の指定商品「眼鏡,眼鏡枠」を取り扱う分野において,3桁の数字は,上記(ア)aのように,ローマ文字1字又は3字と結合して使用されていることはもとより,上記(ア)b~hのように個別の名称といえる文字と結合して使用されている実情もあり,一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号又は符号として,取引上,類型的に採択・使用されているものといえることから,本願商標中の「900」の数字部分は,商品の型式,規格等を表示するための記号又は符号と認識し把握されるに止まるものである。

(ウ)この点について原告は,「3桁程度の数字が自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号,符号として商取引上類型的に使用されている例はあるが,必ずしもそのような場合ばかりではなく,本願商標のように需要者の間で数字部分を含む商標全体として広く認識されている場合などは,その3桁の数字も含んで自他商品識別機能・出所表示機能を発揮するものである。」と主張し,甲73~75,77~79を提出している。

しかし,本願商標は,既に述べたとおり,本願商標に接する取引者,需要者が,これを常に一体不可分のものとして把握するとまで本願商標が著名なものとなっているとは認められないことから,本願商標を常に一体不可分のものとして把握すべき特段の事情を見出し得ないものであり,原告の上記主張は失当である。

また,甲73~75,77~79の商標は,本願商標とその構成及び態様を異にするものであるばかりでなく,そもそも具体的事案の判断においては,これらの既登録例に何ら拘束されることなく検討されるべきであるから,それらの登録例が存在するからといって,原告の主張が正当であるという根拠にはなり得ない。

(エ)原告は,「Factory」の文字を含んで登録されている商標の例を挙げるなどして,「通常であれば識別力を発揮し得ないような単純な文字や普通名称であっても,『Factory』のような識別力がないか又は微弱である言葉と組み合わせる場合には,需要者はそれぞれを分離して認識しているのではなく,商標全体として認識しているものであり,全体として称呼及び観念を想起するものである。」と主張している。

しかし,本願商標は,既に述べたとおり,その構成中の「900」の数字が,自他商品の識別標識としての機能を欠くものであるのに対し,「Factory」の文字は,指定商品を取り扱う分野において,その商品の品質等を表示するものではなく,十分に自他商品の識別標識として機能し得るものであるから,その両者が外観上分離して認識されるばかりでなく,「Factory」の欧文字部分が強く印象付けられるものである。そのことから,本願商標は,「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずることを否定できないものであり,全体として一連の称呼及び観念のみを想起するものであるとはいえない。

また,原告が登録例として指摘する商標は,本願商標とその構成及び態様を異にするものであるから,それらの登録例が存在するとしても,「Factory」の文字を除く各文字部分が,その指定商品との関係において品質を表すのか用途を表すのか,指定商品との関係でどのように認識されるのか,商標全体の結合の態様はどうかなど,個別的,具体的に判断されるべきであって,これらを本願商標と同列に論ずることはできない。

(オ)したがって,本願商標中の「900」の数字部分が,商品の型式,規格等を表示するための記号,符号と認識し把握されるに止まるとした審決の認定に誤りはない。

(3) 取消事由2に対し

ア 原告は,「サッポロファクトリーは,引用商標の商標権者サッポロ都市開発株式会社が管理している,北海道札幌市の商業施設・観光地として著名であることから,殊更『Factory』の文字を抜き出して分離して類否判断されるものではない。」と主張し, 甲80,81を提出している。

しかし,原告提出の甲80,81は,「サッポロファクトリー」なる施設がいかなるものであるかを示すに止まるものであり,これらの証拠によっては,上段に「SAPPORO」の文字及び下段に「Factory」の文字からなる引用商標が,商品を表示するものとして本願の指定商品「眼鏡,眼鏡枠」の取引者及び需要者の間において常に一体不可分のものであるとまで広く認識されているとはいえないから,「Factory」の文字を抜き出して類否判断することに何ら誤りはない。

イ また,原告は,「『ファクトリー』又は『Factory』の文字は,商標の一部として眼鏡及び眼鏡枠の業界では多数用いられているものであり,単に『Factory』のみでは誰の商品に係る商標であるか不明である」と主張する。

しかし,既に述べたとおり,「Factory」の文字は,商品「眼鏡,眼鏡枠」を取り扱う分野において,その商品の品質等を表示するものではなく,十分に自他商品を識別し得るものであるから,原告の主張は失当である。

ウ さらに原告は,「『SAPPORO』の文字は,引用商標の出願人であるサッポロビール株式会社を想起するから,『SAPPORO』の文字を含む商標に接した需要者・取引者にとっては,サッポロビール株式会社と関連するものとの認識を持つ」旨主張する。

しかし,商品「ビール」などの酒類について,「SAPPORO」の文字を含む引用商標が使用された場合には,当該「SAPPORO」の文字部分からサッポロビール株式会社を想起することがあるとしても,商品「眼鏡」について引用商標が使用された場合には,商品「ビール」と商品「眼鏡」とでは,その販売場所,原材料,用途等が全く異なることから,サッポロビール株式会社を想起することはないというべきである。

また,既に述べたとおり,引用商標の構成中の「SAPPORO」の文字部分は,商品の産地,販売地を示すための地名を表しているものと理解し,認識するものといえるから,「SAPPORO」の部分に識別力がないとする審決の認定に誤りはない。

エ 以上のとおり,原告の主張は,いずれも失当であって,引用商標が「Factory」の文字部分に相応して「ファクトリー」の称呼及び「工場」の観念をも生ずるものであるとした審決の認定に誤りはない。

(4) 取消事由3に対し

既に述べたとおり,本願商標と引用商標とは,類似の商標というべきである。

当裁判所の判断

1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。

2 本願商標と引用商標の類否

(1) 本願商標と引用商標の内容

ア 本願商標は,前記第2のとおり,「Factory 900」というものであって,同じ書体でかつ同じ大きさの文字で一連に記載したものである。

イ 一方,引用商標は,前記第2のとおり,上段に「SAPPORO」と記載し下段に「Factory」と記載したものである。下段の「Factory」は,1文字目を大文字,その余を小文字として角張った書体で表され,上段の「SAPPORO」に比して4倍ほどの大きさで,かつ,かなり太い線で表されている。

(2) 類否判断の基準

商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品又は役務に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎりその具体的取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。一方,商標は,その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,同平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,同平成20年9月8日第二小法廷判決裁判集民事228号561頁参照)。

(3) 本願商標についての検討

ア 本願商標の周知性

(ア) 証拠(甲8~56,63~69,93)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

a 福井県眼鏡工業組合が平成6年5月から始めた統一マーク推進事業において,原告のメーカー識別番号は900となった。

そこで,原告は,「Factory 900」の商標の下に眼鏡の製造販売を始めた。

b 原告が「Factory900」の商標の下に製造販売する眼鏡は,「メガネの国際総合展」(IOFT)の新製品デザインコンテストにおいて次のとおり表彰された。

・2003年(平成15年)に,「トレンド部門」において,「アイウェア・オブ・ザ・イヤー2003」に選ばれ,表彰された。

・2004年(平成16年)に,「メンズ部門」において,「アイウェア・オブ・ザ・イヤー2004」に選ばれ,表彰された。

・2005年(平成17年)に,「レディース部門」において,「アイウェア・オブ・ザ・イヤー2005グランプリ」に選ばれ,表彰された。

「メガネの国際総合展」(IOFT)は,東京で毎年開催される眼鏡の展示会で,世界各国から多くの企業が出展し,取引が行われる。同展では,日本メガネベストドレッサー賞の表彰が行われるほか,同展については,多くの各種の一般紙及び業界紙で紹介されている。なお,2008年(平成20年)の「メガネの国際総合展」(IOFT)の入場者は,合計1万5811人であった。

c 原告が「Factory900」の商標の下に製造販売する眼鏡は,以下のとおり,一般の消費者を対象とする雑誌の記事等において紹介された。

・「THE EYES」2007年(平成19年)3月号付録興隆出版社(甲11)

・「Men's Brand」2006年(平成18年)2月号成美堂出版株式会社(甲17)

・「SENSE」2006年(平成18年)2月号株式会社ラウンドハウス(甲18)

・「MODE OPTIQUE Vol.16」2004年(平成16年)ころ発行株式会社ワールドフォトプレス(甲19)

・「MODE OPTIQUE Vol.12」平成14年1月発行株式会社ワールドフォトプレス(甲20)

・「Private eyes」2004年(平成16年)12月号オプティカルメディアコミュニケーションズ(甲21)

・「Best Gear」平成17年2月号徳間書店(甲22)

・「GOGGLE 」2003年(平成15年)6月号モーターマガジン社(甲23)

・「Men's Brand」2005年(平成17年)4月号成美堂出版株式会社(甲24)

・「眼鏡Begin vol .3」平成17年10月10日発行株式会社世界文化社(甲25)

・「MEN'S EX 」2007年(平成19年)5月号株式会社世界文化社(甲26)

・「Magazine You」2006年(平成18年)1月12日発行(甲27)

d インターネットの検索サイトである「Google」,「YAHOO!JAPAN」,「goo」において「Factory900」を検索すると,多くのウェブページがヒットする(甲28~30)。

e 多数の小売店のウェブページにおいて,原告が「Factory 900」の商標の下に製造販売する眼鏡が紹介されている(甲31~46)。

f 個人のブログ等において,原告が「Factory 900」の商標の下に製造販売する眼鏡が紹介されている(甲47~56)。

その中には,「3Dプレスによる立体成形技術はこのFactory 900にしかないそうで滑らかにつながった特徴的な曲面がこのブランドならではの魅力だそうですいやぁいい感じです」との記載(甲48),「今回購入したのは『Factory900 fa920』です!! 友人がかけていたメガネがあまりに格好良くて思わずどこで買ったのか聞いてしまいました!?」との記載(甲49),「今回は,デザイン重視でFactory900っていうファクトリーブランドにしました」との記載(甲53),「先日東京にて購入したFactory900の眼鏡です。非常に立体的でインパクトがあります。カラーもありそうでない透明度が高いグレー。良い買い物をしました。」との記載(甲54)等がある。

g 原告が「Factory 900」の商標の下に製造販売する眼鏡は,福井県立歴史博物館に所蔵されている。

(イ)上記(ア)bの事実によれば,原告が「Factory 900」の商標の下に製造販売する眼鏡は,「メガネの国際総合展」(IOFT)の新製品デザインコンテストにおいて,平成15年から平成17年まで3年にわたって「アイウェア・オブ・ザ・イヤー」を受賞し,平成17年にはグランプリを受賞したところ,「メガネの国際総合展」は,世界各国から多くの企業が出展し,取引が行われる注目度の高い展示会であると認められるから,上記受賞の事実は,「Factory 900」の商標が広く知られるのに大きな貢献があったものと認めることができる。

そして,この事実に,上記(ア)認定の他の事実を総合すると,本願商標は,原告が製造販売する眼鏡を表示するものとして,需要者,取引者の間に広く知られているものと認められる。

そして,証拠(乙2,3)によれば,日本の眼鏡人口は約6000万人であると認められ,その範囲は,被告が主張するように広範かつ重層的であると推認されるが,上記(ア)認定の事実,殊に,上記(ア)bのとおり「メガネの国際総合展」(IOFT)については多くの一般紙でも紹介されていること,上記(ア)cの雑誌は一般の消費者を対象とするものであること,小売店のウェブページも一般の消費者を対象とするものと考えられることなどに照らせば,本願商標は,原告が製造販売する眼鏡を表示するものとして,業界のみならず,広範かつ重層的な需要者の間においても,広く知られていると認めることができるのであって,これに反する被告の主張は採用することができない。

イ 本願商標のうち「900」の数字部分

(ア)「眼鏡,眼鏡枠」において,以下のa~fのとおり,数字が,商品の型式,規格を表示するために用いられる例があることが認められる。

a 「眼鏡市場」のウェブページにおける,「SS-805」,「SS-804」,「CLR-100」,「CLR-400」等の表示(甲5,6)

b 「眼鏡コレクションVol.1」(2009年[平成21年]1月31日発行株式会社ネコ・パブリッシング)における次の各表示

・ 「BM-008 col.l」,「BM-006 col.2」及び「BM-007col.4」の各表示(13頁,乙4)

・ 「JN-47101」,「JN-472 01」及び「JN-470 02」の各表示(24頁,乙5)

・ 「S-131」,「S-132」,「S-133」及び「S-134」の各表示(30頁,乙6)

・ 「FF-105」,「FF-106」及び「FF-107」の各表示(34頁,乙7)

・ 「CF560」,「CF561」,「CF715」,「CF718」,「CF564」,「CF717」,「CF563」及び「CF716」の各表示(53頁,乙8)

・ 「Ca-101」,「Ca-102」,「Ca-103」,「Ca-104」及び「Ca-105」の各表示(55頁,乙9)

・ 「V740」,「V741」,「V736」,「i001」及び「V205」の各表示(57頁,乙10)

・ 「M170」,「M171」,「M174」,「M906」及び「M909」の各表示(58頁,乙11)

c 株式会社アイ・トピアのウェブサイト「MEGANE STORE/メガネストアー」中の「商品情報」における,「キッズラビット800」,「キッズラビット700」等の表示(甲3),「コンディーレ001」,「フウライボウ12-200」等の表示(甲4)「品番/彩美(サイビ)2725」,「品番/ヒトミ7210」の各表示(乙15,16)

d 株式会社メガネスーパーのウェブサイト中の「メガネ」,「コラボレーションモデル」,「AYA UETO(上戸彩プロデュース)」における,「アヤ・ウエト573」,「アヤ・ウエト565」等の表示(甲7)

e 株式会社三城のウェブサイト中の「商品情報」,「フレーム・レンズ」における,「EDGE 008」,「EDGE 009」,「EDGE 010」,「EDGE 018」,「EDGE 019」及び「EDGE 021」の各表示(乙12)並びに「LAPHAS 935」,「LAPHAS 936」,「LAPHAS 938 」,「LAPHAS 939」及び「LAPHAS 940」の各表示(乙13)

(イ)他方,インターネットのウェブページ「眼鏡Web」の「眼鏡ブランドお問い合わせ先一覧」(甲73)には,眼鏡ブランドとして,「タケオ365(TAKEO de 365)」,「セルッティ1881 (CERRUTI 1881)」,「スーパーメモリー21(super memory21) 」,「コレクション2000(COLLECTION 2000)」,「フォーナインズ(999.9)」が挙げられている。

また,「TEAM291本部」のインターネットウェブページ(甲75)には,眼鏡ブランドとして「THE291」が掲載されている。

そして,これらのうち,「TAKEO de 365 」,「THE291」,「super memory21」は,次のとおり商標登録されている。

a 登録第4199124号(甲78)

・商標

・商標権者株式会社西田武生デザイン事務所

・登録日平成10年10月16日

・指定商品第9類「眼鏡」等(詳細は省略)

b 登録第4489037号(甲79)

・商標

・商標権者チックオプティックインコーポレイテッド

・登録日平成13年7月6日

・指定商品第9類「眼鏡」

c 登録第4740576号(甲77)

・商標「THE291」(標準文字)

・商標権者社団法人福井県眼鏡協会

・登録日平成16年1月16日

・指定商品第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」これらのことからすると,「眼鏡,眼鏡枠」において,数字を,商標の一部として用いる例があることが認められる。

(ウ)以上の(ア),(イ)の各事実によれば,「眼鏡,眼鏡枠」において,数字が,商品の型式,規格を表示するために用いられる例があるとしても,商標の一部として用いられる例もあるから,本願商標のうち「900」の数字部分は,「一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式,規格等を表示するための記号,符号として商取引上類型的に使用されている」(審決2頁24行~26行)とまで認めることはできない。

ウ 本願商標のうち「Factory」の部分

本願商標のうち,「Factory」は,「工場,製作所」等の意味を有する英語である(「小学館ランダムハウム英和大辞典」1999年1月10日発行株式会社小学館944頁,乙1)。証拠(甲72,88~92)及び弁論の全趣旨によれば,類似群コード23B01(眼鏡,眼鏡枠)を指定商品として「FACTORY」,「Factory」,「factory」又は「ファクトリー」を含む商標を検索すると,34件出願され,28件登録されていること,その登録されたものの中には,「G-FACTORY」,「P-Factory」,「GLASSFACTORY」,「アイズファクトリー\eye'sfactory」といったものがあることが認められる。

このように,「眼鏡,眼鏡枠」について,「FACTORY」,「Factory」,「factory」又は「ファクトリー」を含む多くの商標が存することからすると,必ずしも,本願商標のうち「FACTORY」の部分のみが識別力が高いということはできない。

エ 以上のア~ウの各事実によれば,本願商標については,次のようにいうことができる。

(ア)前記(2)のとおり,商標は,その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから,商標構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない。

(イ)上記アのとおり,本願商標は,原告が製造販売する眼鏡を表示するものとして,需要者,取引者の間に広く知られているものと認められること,上記イのとおり,本願商標のうち「900」の数字部分は,必ずしも商品の型式,規格等を表示するための記号,符号と認識されるとは限らないこと,上記ウのとおり,必ずしも本願商標のうち「FACTORY」の部分のみが識別力が高いということはできないこと,及び本願商標は,「Factory900」と同じ書体でかつ同じ大きさの文字で一連に記載したものであることを総合すると,本願商標は,一連一体のものとして認識されると解するのが相当である。

そして,本願商標について,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することができるというべき事情,すなわち,前記(2)の「複数の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの事情が存するとは認められない。

(ウ)したがって,本願商標全体を引用商標と比較して類否を判定すべきであるということができる。

(4) 引用商標についての検討

ア 証拠(甲80~87)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(ア)「サッポロファクトリー」は,札幌市中央区に所在するサッポロ都市開発株式会社が運営しているショッピングモールを中心とした大型複合施設で,サッポロビール北海道工場の跡地に建設され,平成5年に開業したものである。

「サッポロファクトリー」には,各種の店舗のほか,ホール,ホテル,映画館,日帰り入浴施設などがある。

(イ)サッポロ都市開発株式会社は,持株会社であるサッポロホールディングス株式会社,サッポロビール株式会社等から構成されているサッポロビールグループの会社である。

(ウ)引用商標は,平成2年12月3日,サッポロビール株式会社によって出願され,平成5年8月31日に商標登録を受けた。その後,引用商標の商標権は,サッポロビール開発株式会社,恵比寿ガーデンプレイス株式会社を経て,サッポロ都市開発株式会社に移転している。これらの移転は,サッポロビールグループ内における会社の再編によるものである。

イ 上記ア認定の事実によれば,引用商標は,札幌市中央区に所在するサッポロ都市開発株式会社が運営している大型複合施設である「サッポロファクトリー」を想起させるものということができる。そのことは,引用商標が「眼鏡」について使用されたとしても異なるものではないというべきである。

また,引用商標の下段の「Factory」は,前記第2記載のとおり,上段の「SAPPORO」に比して4倍ほどの大きさで,かつ,かなり太い線で表されているが,引用商標は,上記のとおり,札幌市中央区に所在する大型複合施設である「サッポロファクトリー」を想起させることから,引用商標の下段の「Factory」と上段の「SAPPORO」が分離して認識されるとは解されないのであって,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することができるというべき事情,すなわち,前記(2)の「複数の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」などの事情が存するとは認められない。

(5) 本願商標と引用商標の類否についての検討

前記(3)で述べたところからすれば,本願商標は,一連一体のものと認識されて,「ふぁくとりーきゅーひゃく」又は「ふぁくとりーきゅーぜろぜろ」の称呼と,「工場」及び数字の「900」の観念を生ずる。

これに対し,引用商標からは,「さっぽろふぁくとりー」の称呼と札幌市中央区に所在する大型複合施設である「サッポロファクトリー」の観念を生ずる。

これらの称呼と観念の違いに加えて,前記第2,2(1)(2)記載のような外観の違いも総合考慮すると,本願商標と引用商標とは商標法4条1項11号にいう「類似」とはいえないと解すべきである。

そうすると,原告主張の取消事由1~3はいずれも理由があり,その違法は審決の結論に影響を及ぼすものというべきである。

3 結論

よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。

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