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平成20年(行ケ)第10380号審決取消請求事件


主文

1 特許庁が無効2007-890121号事件について平成20年9月9日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は,被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

主文同旨

第2 当事者間に争いのない事実等

1 特許庁における手続の経緯等

原告は,登録第5046619号商標(以下,「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は,「ラブコスメ」の片仮名文字を標準文字により表記し,指定商品を第3類「化粧品」(以下「本件指定商品」という。)として,平成18年3月13日に登録出願され,平成19年4月20日登録査定がされ,同年5月11日に設定登録された(甲1)。被告は,平成19年7月18日,特許庁に対し,本件商標登録は,商標法4条1項11号に該当するとして,無効審判(無効2007-890121号事件)を請求した(甲17)。特許庁は,平成20年9月9日,「登録第5046619号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は同月19日に原告に送達された。

2 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,以下のとおりである。

本件商標「ラブコスメ」のうち,「コスメ」の部分は「コスメチック」(化粧品)の略称であり識別機能を有しないから,「ラブ」の部分が自他商品の識別機能を有する要部である。本件商標は,「ラブ」の称呼及び観念を生ずる点で,以下の各引用商標(被告が引用した商標は,下記アないしカの各商標,これらを一括して「本件各引用商標」という場合がある。)と類似し,商標法4条1項11号に該当する。したがって,同法46条1項の規定により,本件商標登録を無効とすべきであると判断した。

ア 登録第542450号商標(以下「引用商標1」という。)

別掲(1)のとおり,欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を特有の書体により横書きで表記したものであり,「v」の右上先端部に,「'」が付された特有の文字からなる商標である。昭和33年8月30日に登録出願され,第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として,昭和34年9月28日に設定登録され,その後,昭和55年1月31日,平成元年8月23日及び平成11年8月10日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされた(甲11の1及び2)。

イ 登録第2219231号商標(以下「引用商標2」という。)欧文字「LOVE」(すべて大文字)を横書きで表記したもので,昭和46年8月5日に登録出願され,第4類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として,平成2年3月27日に設定登録され,その後,平成12年5月23日に商標権の存続期間の更新登録がされた(甲12の1及び2)。

ウ 登録第2219232号商標(以下「引用商標3」という。)片仮名「ラブ」を横書きで表記したもので,昭和46年8月5日に登録出願され,第4類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として,平成2年3月27日に設定登録され,その後,平成12年5月23日に商標権の存続期間の更新登録がされた(甲13の1及び2)。

エ 登録第2431617号商標(以下「引用商標4」という。)

別掲(2)のとおり,上段に欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を特有の書体により横書きで,下段に片仮名「ラブ」を,それぞれ表記したものであり,昭和48年5月10日に登録出願され,第4類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として,平成4年7月31日に設定登録され,その後,平成14年5月28日に商標権の存続期間の更新登録がされ,さらに,平成16年3月3日に指定商品を第3類「歯みがき,化粧品,香料類,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされた(甲14の1及び2)。

オ 登録第4277280号商標(以下「引用商標5」という。)

別掲(3)のとおり,L字状の図形を左から右下方に大きく表記し,欧文字「ove」(すべて小文字)をその右側に表記したものであり,平成9年12月22日に登録出願され,第3類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として,平成11年5月28日に設定登録された(甲15の1及び2)。カ登録第4522976号商標(以下「引用商標6」という。)

片仮名「ラブ」を上段に,欧文字「LOVE」(すべて大文字)を下段に,上下二段に横書きで表記したもので,平成13年1月9日に登録出願され,第3類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として,平成13年11月16日に設定登録された(甲16の1及び2)。

第3 当事者の主張

1 審決の取消事由に係る原告の主張

以下のとおり,本件商標は本件各引用商標と類似するから,商標法4条1項11号に該当するとした審決の認定,判断は誤りである。

(1)本件商標の要部(識別力のある部分)について

ア 本件商標は,片仮名「ラブコスメ」(標準文字)を,「ラブ」と「コスメ」の間にスペースを置かずに,横書きで一連に表記され,その音数は5音と極めて短いことから,本件商標に接した需要者及び取引者は,これを一連一体のものとして認識する。

「コスメ」は「化粧品」を意味する「COSMETIC」の略語として,認識理解される可能性はあるものの,平均的な日本人にとって必ずしも平易な語であるとはいえない。「コスメ」の部分について,必ずしも,化粧品を意味する語であると容易に理解されるとはいえない(甲25)。

イ 取引の実情からみても,原告の運営する「ラブコスメ」に係るウェブサイトの平成17年1月から平成19年1月までの推定接触者数は約30万人ないし80万人であって同種業界内で10位以内に入っており(甲25),大手化粧品会社に勝るとも劣らないものであり(甲26),本件商標は「ラブコスメ」として周知性を有している。本件商標は,需要者及び取引者により,「ラブコスメ」と称呼しているのが実情である(甲48の1及び2)。

ウ 以上のとおりであり,本件商標の識別力のある部分は,「ラブコスメ」全体にあるというべきであり,「ラブ」のみにあるということはできない。

したがって,本件商標からは,「ラブコスメ」の称呼を生じ,片仮名横書きの「ラブコスメ」との外観を生じ,「愛の化粧品」,「愛のある化粧品」などという観念が生ずる可能性がある。

(2)本件各引用商標及び本件商標との類否について

本件各引用商標からは,「ラブ」の称呼が生じ,引用商標1ないし6から,順に,①欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を,特有の書体による横書きで表記したものであり,「v」の右上先端部に,「'」が付された特有の形状,②欧文字「LOVE」(すべて大文字)を横書きで表記した形状,③片仮名「ラブ」を横書きで表記した形状,④上段に欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を特有の書体で表記し,下段に片仮名「ラブ」を表記した形状,⑤L字状の図形を左から右下方に大きく表記し,欧文字「ove」(すべて小文字)をその右側に表記した形状,⑥片仮名「ラブ」を上段に,欧文字「LOVE」(すべて大文字)を下段に,上下二段に横書きで表記した形状による外観を示し,「愛」,「愛情」等の観念を生ずる。

以上のとおり,称呼,外観,観念及び取引の実情を考慮すると,本件商標と本件各引用商標とは類似しないというべきであり,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない。

2 被告の反論

以下のとおり,本件商標登録が本件各引用商標と類似し,商標法4条1項11号に該当するとした審決の認定,判断に誤りはない。

(1)本件商標の要部(識別力のある部分)について

本件商標のうち,「コスメ」との部分は,次のとおり普通名称として認識されるから,当該部分に出所識別力はない。

ア「コスメチック」は「化粧品」を意味する英語である株式会社岩波書店「広辞苑」第3版・乙9)。「コスメ」の語も,遅くとも平成7年ころまでに,一般に化粧品を意味する「コスメティック(cosmetic)」の略語であると広く認識されていた(乙10,乙102)。

イ また,仮に「cosmetic」の語が,日本人にとって平易な英語ではないとしても,少なくとも,その略称である「cosme」や「コスメ」の字句は化粧品を意味するものとして広く認識されていた。

例えば,百貨店・量販店などの化粧品コーナー,通販用ウエブサイト,カタログ,パンフレット,ファッション雑誌,新聞広告,化粧品などを紹介する書籍等において,「コスメ」の語が化粧品を意味する語として恒常的に使用されている(乙11ないし31,乙103~144)。

平成16年ころには,デパートの化粧品売り場を舞台とした「コスメの魔法」と題するテレビドラマが放映された(乙128)。

ウ 平成21年1月29日,「Google」において,「化粧品」の語で検索した場合のヒット数が「24,400,000」であったのに対し(乙199),「コスメ」の語で検索した(「コスメチック」「コスメティック」の語の混入を避けて検索した。)場合のヒット数が「42,400,000」であった(乙201)。上記の結果は,「コスメ」の語が定着していることを示している。また,例えば,「エステティック」と「エステ」,「コンビニエンスストアー」と「コンビニ」など,略称が広く普及する傾向があることに照らすならば,「コスメ」が,化粧品を指す語であることは,化粧品の需要者の間で広く知られているといえる。

エ 化粧品取引や需要者間において,○○ブランドの化粧品について,ブランド名の後に「コスメ」を付加することが慣行的に行われている(乙32~78)。したがって,需要者は,「ラブコスメ」の本件商標が付された化粧品を見た場合には,「ラブ」をブランドとする化粧品であると認識する。

オ なお,原告は,本件商標の知名度が高いと主張する。しかし,本件商標に周知性があるとは認められない。のみならず,原告は,被告の本件各引用商標に係る権利を侵害することによって,本件商標の知名度を高めたのであって,このような使用による結果は,斟酌されるべきではない。

カ 以上のとおり,少なくとも化粧品の需要者において,「コスメ」の語は化粧品を意味する普通名称であると認識されているから,「コスメ」の語は,化粧品に付された場合,商品の出所識別機能がない。

本件商標のうち,「ラブ」が,本件商標の要部(識別力のある部分)であると認定した審決に誤りはない。

(2)本件各引用商標及び本件商標との類否について

本件各引用商標からは,「ラブ」の称呼が生じ,第2,2のアないしカのとおりの外観を示し,「愛」,「愛情」などを観念を生ずる。

なお,大阪高等裁判所平成19年ネ第3057号商標権侵害差止等請求控訴事件の判決では,被告の本件各引用商標の使用実績が少ないと認定されているが,そのような事実があったとしても,先願商標登録を有する本件各引用商標と本件商標の類否が否定される理由にはならない。

なお,被告は,「Love」の語を商標として付した各種化粧品の広告を,平成19年5月ころから平成20年9月9日までの約16か月間だけでも,産経新聞,読売新聞,毎日新聞などの朝刊又は夕刊に,読者の注目を惹く紙面全面広告,カラー広告又はテレビ欄広告を含む態様で,合計230回以上(2日に1回程度)実施した(乙155ないし198,乙206ないし395)。また,被告は,これらの新聞の折り込みチラシ,地方新聞,インターネットのウェブサイト,ファッション雑誌などを利用した広告を繰り返し実施した乙396ないし乙418。したがって,「Love」の語からなる商標は,被告の商品の出所を示すものとして周知であるか,相当程度の知名度を獲得している。

以上のとおり,称呼,外観,観念及び取引の実情を考慮すると,本件商標と本件各引用商標とは類似するというべきであり,本件商標は,商標法4条1項11号に該当する。

当裁判所の判断

当裁判所は,本件商標は,本件各引用商標のいずれにも類似しないから,商標法4条1項11号に該当しないと判断する。その理由は,以下のとおりである。

1 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年オ第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号平成20年9月8日第二小法廷判決参照)。

以下,本件商標と本件各引用商標との類否を判断するに当たって,上記の観点を考慮して,本件商標の要部(識別機能を有する部分)について,考察をする。

(1)本件商標について

本件商標は,「ラブコスメ」の片仮名文字を標準文字により表記し,指定商品を第3類「化粧品」として,平成18年3月13日に登録出願され,平成19年4月20日登録査定がされ,同年5月11日に設定登録されたものである。

ア 本件商標のような片仮名5文字からなる商標が,複数の構成部分を組み合わせたいわゆる結合商標と解されるか否かは,総合的な検討を加えた結果として,はじめて判断することができるものであって,本件商標が結合商標に該当するとの所与の前提をおいて検討するのは妥当でないが,本件では,差しあたり,審決の判断内容及び当事者の主張に即して,「ラブ」の部分と「コスメ」の部分に分けて,順次検討することとする。

イ まず,本件商標の構成中の「ラブ」の部分について検討する。

「ラブ」の語は,名詞としては「愛」,「愛情」,「好意」など,動詞としては「人を愛する」,「恋をする」,「好きになる」などを指す,我が国では,よく知られた語である。

次に,本件商標の構成中,「コスメ」の部分について検討する。

「cosmetic」ないし「コスメチック」は,「化粧品」を指す英語ないしその片仮名表記であることが認められるが(株式会社岩波書店「広辞苑」第3版・乙9),それらの語が,我が国において,本件登録出願及び登録査定のときに,化粧品を指す語であることが,一般に認識されていたとは,認められない。そして,「コスメ」は,ファッション,化粧品関連の雑誌,図書,通信販売用カタログ・パンフレット等において,化粧品を指す語として,使用されていること,美容に関心のある一部女性の中では,化粧品を指す語として,理解されていることが推認できるが(乙11ないし31,乙103~144),他方,「cosmetic」ないし「コスメチック」が,一般に知られていないことを考慮すると,本件全証拠によっても,「コスメ」の語が,我が国において,化粧品を指す「cosmetic」ないし「コスメチック」の語の省略であることが認識されているとまではいえない。

ウ 本件商標は,「ラブコスメ」の片仮名文字を標準文字により,一連に表記したものであり,その音数は5音であって,ごく短いものであることに照らすと,本件商標に接した需要者及び取引者は,これを一連一体のものとして認識,理解する。本件商標からは,片仮名横書きの「ラブコスメ」との外観を生じ,「ラブコスメ」の称呼を生じ,これを更に短縮した「ラブ」との称呼を生ずると解するのは不自然である。

また,前記検討したとおり,「コスメ」が,化粧品を指すものとして,我が国において,一般的に認識理解されているとまではいえないこと,本件商標が,ごく短い語からなる商標であることに照らすならば,本件商標の一部である「ラブ」のみによって識別されるということができない。全体として造語であるため,使用態様及び需要者により,「愛情・愛に関連する化粧品」などの観念を生ずる余地は否定できないものの,多様な観念を生ずる可能性があり,その意味で特定の観念は生じない。

(2)本件各引用商標について

本件各引用商標は,引用商標1ないし6から,順に,①欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を,特有の書体による横書きで表記したものであり,「v」の右上先端部に,「'」が付された特有の形状,②欧文字「LOVE」(すべて大文字)を横書きで表記した形状,③片仮名「ラブ」を横書きで表記した形状,④上段に欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を特有の書体で表記し,下段に片仮名「ラブ」を表記した形状,⑤L字状の図形を左から右下方に大きく表記し,欧文字「ove」(すべて小文字)をその右側に表記した形状,⑥片仮名「ラブ」を上段に,欧文字「LOVE」(すべて大文字)を下段に,上下二段に横書きで表記した形状から成るものである。

本件各引用商標からは,上記認定したとおりの外観を生じ,このうち,引用商標2ないし4,6からは,「ラブ」の称呼を,また,「愛」,「愛情」,「好意」,「人を愛する」,「恋をする」,「好きになる」などの観念を生ずる(なお,引用商標1及び5からは,必ずしも,「ラブ」の称呼及び上記の観念のみを生ずるか否かについては,確定することができない。)。

そして,指定商品中の「化粧品」が,「美しく見えるよう,飾ったりするために用いるクリーム,洗顔剤などの商品」であることに照らすならば,「ラブ」の構成(引用商標2ないし4,6中の「ラブ」の称呼を生ずる部分を含む。以下同じ。)は,指定商品中の「化粧品」と,直接的な関連性があるとまではいえないが,密接な関連性を有する語であるということができる。そのような指定商品との関連性を考慮すると,「ラブ」の構成は,指定商品中の「化粧品」等に用いられる場合は,当然には,強い識別力・排他力を持つ語であるということはできない。

(3)本件商標及び本件各引用商標の使用態様

ア 本件商標について

本件商標を付した指定商品は,性的な悩みを解決する化粧品等の商品を含むものであり,「caz」,「TOKYO1週間」,「VoCE」,「クチコミきれい」,「JELLY」,「OZmagazine」,「Chouchou」,「VoCE」,「ViVi」,「ゆほびか」等の雑誌に紹介がされている。その販売は,主にインターネット等を経由した通信販売等によって行われてきた(甲28,29,37,39,40,43)。原告の運営する「ラブコスメ」に係るウェブサイトの平成17年1月から平成19年1月までのアクセス者数は毎月約20万人ないし80万人であり,同種の業界内でも決して低位ではない(甲25,26)。

イ 本件各引用商標について

本件全証拠によるも,本件商標が登録出願された平成18年3月13日ないし登録査定がされた平成19年4月20日より前に,本件各引用商標が,広く使用されていたとの事実は認められない。確かに,①被告発行に係る社史には,「クラブラブ乳液」や「Love」の付された商品の写真が掲載されているが,被告の商品には,「クラブ化粧品の誕生」など,むしろ「クラブ」との標章が多く使用されており,被告の商品に,引用商標1が使用されていたことは確認できないこと(甲33),②被告は,平成8年2月に,「ラブ」の名称の付された商品の発注伝票(甲34)を一枚だけ提出しているが,それ以外に,「ラブ」の名称が付された被告商品が販売されていたと認めるに足りる証拠の提出はないこと,③平成18年ころ,顧客と小売店との間で交換されたメールにおいて,顧客から(株)ホームセンターサンコーに対して,「『LOVE』という名称の商品(「ネイルポリッシュ」及び「ネイルリムーバー」)が格安(200円前後)で販売されていたのを発見したので,メーカー名を教えてほしい」旨の問い合わせがあり,同ホームセンターは,「メーカーが被告であること,当該商品は既に廃盤とされていた」との回答をしたこと(甲42)等の事実が認められ,そのような事実を総合すると,本件各引用商標を付した商品については,どの程度の数量が取引され,どのような態様で流通されていたかは明確ではなく,取引があったとしても,わずかであると推認される。なお,本件平成18年4月ころから,被告は,「Love」の語を含んだ各種化粧品について,産経新聞,読売新聞,毎日新聞に合計230回以上,また,折り込みチラシ,地方新聞,インターネットのウェブサイト,ファッション雑誌にも,広告を掲載しているが(乙155~198,乙206~418),これらは,引用商標2ないし6について,不使用取消しの審判が提起されたことを契機として,行われた広告であることが推認される(甲12ないし16の各2)。

(4)本件商標と本件各引用商標の類否について

ア 判断

(ア)外観及び称呼

本件商標は,「ラブコスメ」の片仮名文字を標準文字により,一連に表記したものであり,その音数は5音であって短く,本件商標に接した需要者及び取引者は,これを一連一体に認識,理解するものと解するのが相当であるから,本件商標からは,片仮名横書きの「ラブコスメ」との外観及び称呼を生じる。

他方,本件各引用商標は,引用商標1ないし6から,順に,①欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を,特有の書体による横書きで表記したものであり,「v」の右上先端部に,「'」が付された特有の形状,②欧文字「LOVE」(すべて大文字)を横書きで表記した形状,③片仮名「ラブ」を横書きで表記した形状,④上段に欧文字「Love」(Lが大文字,他の文字は小文字)を特有の書体で表記し,下段に片仮名「ラブ」を表記した形状,⑤L字状の図形を左から右下方に大きく表記し,欧文字「ove」(すべて小文字)をその右側に表記した形状,⑥片仮名「ラブ」を上段に,欧文字「LOVE」(すべて大文字)を下段に,上下二段に横書きで表記した外観を示し,このうち,引用商標2ないし4,6からは,「ラブ」の称呼を生じる。したがって,本件商標と本件各引用商標は,外観及び称呼において,類似しない。

(イ)観念

本件商標からは,使用態様及び需要者により,「愛情・愛に関連する化粧品」などの観念を生ずる余地は否定できないものの,多様な観念を生ずる可能性があるといえる。他方,本件各引用商標のうち,引用商標2ないし4,6からは,「愛」,「愛情」,「好意」,「人を愛する」,「恋をする」,「好きになる」などの観念を生ずる(なお,引用商標1及び5からは,必ずしも,上記の観念のみを生ずるか否かは定かではない。)。本件商標と本件各引用商標は,観念において,必ずしも類似するとはいえない。

(ウ)取引の実情等

本件商標に係る指定商品は,主にインターネット等を利用した通信販売の形態により購入する需要者を対象としている。

これに対し,本件各引用商標に係る商品は,使用態様を示す具体的な証拠がないので,必ずしも明らかでないが,化粧品を使用する女性の需要者を中心としているものと推認される。両者を比較すると,その取引態様に特殊性はあるものの,大きな相違があるか否かは明らかでない。

そして,前記のとおり,指定商品中の「化粧品」が,「美しく見えるよう,飾ったりするために用いるクリーム,洗顔剤などの商品」であることに照らすならば,本件各引用商標中の「ラブ」の構成は,指定商品中の「化粧品」と,直接的な関連性があるとまではいえないが,密接な関連性を有する構成であるということができ,そのような指定商品との関連性を考慮するならば,「ラブ」の構成は,指定商品中の「化粧品」等に用いられた場合,「ラブ」を含むあらゆる商標に対しても,当然に,強い排他力を持つ構成部分であるということはできない。本件商標の出願時ないし商標登録査定時における本件各引用商標の取引や使用等の実情に大きく左右されるものというべきであるが,被告は,本件各引用商標が使用されていた実情を必ずしも,明らかにしているとはいえない。

以上のとおり外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合し,商品に係る前記認定に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すると,本件指定商品の出所が本件各引用商標の商標権者である被告であるとの誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできず,本件商標と本件各引用商標とは,全体として類似する商標であるとはいえない。

イ 被告の主張及びその他の点について

被告は,化粧品の取引や需要者間においては,周知・著名商標に,続けて「コスメ」を付加することが慣行的に行われる例があることから,需要者は,本件商標「ラブコスメ」が付された化粧品を見た場合には,「ラブ」の商標を有する被告の化粧品であると認識すると主張する。

しかし,本件全証拠によるも,本件商標が出願され,登録査定された,平成18年3月13日ないし平成19年4月20日ころに,本件商標が付された化粧品等に接した場合,取引者が「ラブ」を商標とする化粧品であると認識される程度に,本件各引用商標の「ラブ」の構成が周知・著名であったと認めることは到底できず,この点の被告の主張は採用できない。なお,知的財産高等裁判所平成20年5月28日判決(平成20年〔行ケ〕10042号事件)においては,「アンダーラインを挟んで上段に大きく「Love cosmetic」の欧文字及び下段に小さく「for two persons who love」の欧文字とを2段に表し,その下部に「ラブコスメティック」の片仮名文字を横書きし,上部に左方向に横向きのハート状図形を配した図形について,引用商標2ないし6と類似するとの判断がされている(乙101)。しかし,上記商標は「Love cosmetic」の文字部分の「Love」と「cosmetic」との間に間隙が存在すること,一連一体に把握することが困難な商標であること等,本件商標と相違するものであるから,互いに判断の結果が相違しても,齟齬があるものとはいえない。

そうすると,本件商標と本件各引用商標が類似するとした審決の判断は,誤りである。

2 結論

以上によれば,原告の本訴請求は理由があるから,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。

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