知財高裁による審決取消訴訟の判決をピックアップして掲載しています 

平成19年(行ケ)第10277号審決取消請求事件


主文

1 特許庁が取消2006-303 09号事件について平成19年6月18日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

1 本件は,被告が有する下記商標登録について,原告が不使用による取消しの審判を請求したところ,特許庁が請求不成立の審決をしたので,原告がその取消しを求めた事案である。

2 争点は,取消審判請求の登録時の3年前たる平成15年3月27日からその3年後の平成18年3月27日(登録日)までの間に,下記商標をその指定商品について使用したことがあるか(商標法50条),である。

(商標)(商標省略)

(指定商品)第17類

被服,布製身回品

第3 当事者の主張

1 請求の原因

(1) 特許庁における手続の経緯

ア 被告は,平成12年2月10日以降,下記商標(以下「本件商標」という)の商標権者である。

・商標及び指定商品前記のとおり

・商標登録第861694号

・登録日昭和45年6月20日

・被告への移転登録日平成12年2月10日

イ これに対し原告は,平成18年3月6日,本件商標につき,不使用による取消しの審判を請求(以下「本件審判請求」という)し, 平成18年3月27日にその旨の登録がされた。

特許庁は,同請求を取消2006-30309号事件として審理した上,平成19年6月18日「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決をし,その謄本は平成19年6月28日原告に送達された。

(2) 審決の内容

審決の内容は,別紙審決写しのとおりである。その理由の要点は,商標権者たる被告は,証拠によれば,本件商標の指定商品中の「被服」に含まれる「ウインドジャケット・ティーシャツ」及び「ポロシャツ」につき本件審判請求の予告登録日である平成18年3月27日の前3年以内に本件商標と社会通念上同一の商標を付して使用していたものと認められるから,商標法50条1項によりその登録を取り消すことはできない,としたものである。

(3) 審決の取消事由

しかしながら, 審決には,次のとおり誤りがあるから,審決は違法として取り消されるべきである。

ア 取消事由1(証拠評価の誤り)

(ア)甲21の1~23の2についての証拠評価の誤り

a 甲21の1~23の2は,被告が株式会社大丸ピーコック武庫之荘店に販売したとする商品「ウインドジャケット・ティーシャツ」「ポロシャツ」の写真と納品書(控)等の写しであり,それぞれの商品の胸部分に本件商標が表示されていることから,被告は本件商標を使用していると主張し,審決もこれに沿って本件商標の使用の事実を認定した。

b 原告の社員Aは,平成18年6月12日,14日に大丸ピーコック武庫之荘店において,被告の商品(甲5,7~11)を購入した。すると,いずれの商品にも本件商標が使用されておらず,甲22の1の品番が,甲7の品番と同じであり,また甲23の1の品番は甲5の品番と同じでありながら,品番が同じで商品が違った。さらに甲22の素材が「綿100%」であるのに対し,甲7の素材が「綿95%,ポリウレタン5%」であること,甲23の1の素材が「綿100%」であるのに対し,甲5の素材が「身生地が綿70%,ポリエステル30%,衿部が綿100%」であって,品番が同じで素材が違うことが判明した。

また原告は,ブランディインターナショナル株式会杜に調査を依頼し,大丸ピーコック武庫之荘店の販売店員から「PARIS」のロゴの下に図柄の入った商品の販売をした記憶はない」との回答を得,また同一の商品番号を使用しているのに素材が異なることについては,ブランディインターナショナル株式会杜の調査員が被告に問い合わせてみたところ「PARISシリーズで綿100%のシャツ」は販売していないので商品自体が存在しない」との回答も得た(甲13。)

c これに対し被告は,固有の品番をとることはなく,品番を転用することがあるとするが,これは取引上の経験則とはいえないし,そもそも被告は何を納品したのか,品番を用いたクレームが来たらどのように対応するのか,その品番で再発注があったらどのようにして商品を特定するのか,といった一連の疑義が生じる。

そうすると,甲21の1,22の1,23の1の各写真は,本件商標が左胸上に付された商品に,後から納品した品番の下げ札を付けて撮影したのではないかといった作為的加工を疑わせるものである。

d また,被告は,原告が購入した商品(甲5,7~11)の大丸ピーコックへの納品書等を明らかにしない上,大丸ピーコックの担当者の書面(甲27)を提出するものの大丸百貨店グループのスーパーマーケットである大丸ピーコックという著名で信用の高い業者が,品番を転用するような商品を扱うとは考えられない。

e このように,甲21の1~23の2は,その成立の真正ないし証明力に疑義があり,これらの証拠により本件商標の使用の事実を認めることは到底できないにもかかわらず,これら証拠によって本件商標の使用の事実を認めた審決の判断は誤りである。

(イ)甲24の1~25の証拠評価の誤り

a 甲24の1~25は,被告がブルーピーター株式会社及び株式会社マルエツに販売した商品「ティーシャツ」の写真と納品書(控)等の写しであり,下げ札に本件商標が表示されていることから,被告は本件商標を使用していると主張する。

b これに対し原告社員Fは,平成18年6月22日に株式会社マルエツのFoodexpress新大塚店及び錦糸町店に行ったが,被告の商品が販売されている事実は確認できず,また,東京都所在の株式会社マルエツの衣料の取扱いのある店舗は,葛西クリーンタウン店,真中店,中里店,かまた店,新糀谷店,錦糸町店のみで,これら店舗に電話で問い合わせたが,いずれの店もパリス商品のレディスTシャツはないとの回答を得た(甲1。)

c また甲22の1,23の1に示された商品である「ティーシャツ」「ポロシャツ」と,甲24に示された商品「ティーシャツ」とは同じ日に納品されているところ,甲22の1,23の1に付されている下げ札と,甲24の1の下げ札は,その表面の表示が同じ構成態様であるにもかかわらず,裏面の表示の構成態様が異なっている。

この点で現実の商取引の実情を考えると,そもそもこのような構成態様が異なる下げ札が存在し,商品によって下げ札を変えて納品することが本当にあり得るのか,また,裏面の品質表示面の片隅にこのような態様で本件商標が表示される下げ札は極めて奇異であり,更に下げ札の表面には,被告の本件商標とは違う,被告の別の登録商標(登録第4917238号。乙7。以下「被告別件商標」という)が既に表示されていることからも,甲24,25の下げ札は,本件商標を後から貼付するなど従来の下げ札に作為的に加工したようにしか見えない。

被告はこの点について中国の会社に下げ札を製作させたとするが,5100枚もの下げ札を製作させておきながら甲22と23とで違う下げ札を使うこと自体が理解できないというべきである。

また,納品日から見ても,平成18年2月24日のマルエツへの商品の下げ札には本件商標が表示され(甲24の2の1),平成18年3月23日の大丸ピーコックへの商品の下げ札には本件商標が表示されていなく(甲22の2の1,23の2),平成18年3月23日のブルーピーターへの商品の下げ札には本件商標が表示されており(甲24の3の1,奇異である。そうすると,被告が販売した商品の下げ札には本件商標は表示されていなかったと考えるのが自然である。

d このように,甲24の1~25は,その成立の真正ないし証明力に疑問があり,本件商標の使用を認めることは到底できないにもかかわらず,これに基づき本件商標の使用の事実を認めた審決は明らかに誤りである。

(ウ)その他の証拠

a 納品書(甲21の2の1,22の2の1,23の2,34)被告から大丸ピーコックへの納品書(甲21の2の1,22の2の1及び23の2)の用紙と,はかりやからアオイケへの納品書(甲34)の用紙が同じであって「チェーンストア統一伝票(手書用)」という同じ伝票が使用されているのは不自然であり,また,甲34には検印らしきものがなく,従って,これが真正なものであるとは認められない。

b 下げ札の発注書(甲28の1)

被告から上海山悠製衣有限公司への下げ札の発注書について,そもそもこの発注書では,本件商標が表示された下げ札は作れないはずであり,それは下げ札の表面の色指定はあるものの,本件商標部分の色指定がないからである。本件商標の下地の色はグリーンで,中心の「又」部分は赤色であるが,上海山悠製衣有限公司は,なぜ色指定もしていない当該発注書で当該下げ札を作成できるのか。発注書の体をなしておらず,これが真正なものとは到底認められない。

また,たとえ決まった発注書のフォームがないとしても,取引の実際において, 少なくとも依頼者(被告,納期程度は記載されるはず)であるし,中国の会社への発注であれば,日本語より英語で書くのが一般的であるから,このようなものが発注書といえるか疑問である。

c 書面(甲27)及び陳述書(甲34,35)

これら陳述書等のうち甲35は,作成名義人が陳述しているのに,陳述した日付すら記載されていないのでその記載の形式・態様から, 被告側で自己の主張に沿った陳述内容を作成し作成名義人において, 単に署名捺印したにすぎないと容易に推測できる。

このようにこれら陳述書等は,作成名義人がその内容部分につき真に理解して署名捺印したものであるか明らかでなく,証拠としての価値は極めて低く,これらに基づき本件商標の使用を認めることは到底できない。

なお甲34(Bの陳述書)だけでは,本当に本件商標のシールを貼付したネクタイを製造販売したという事実は証明できていない。

d バーゲンの案内状(甲20の1~5)

被告は,通常使用権者(有限会社フランタリー)のバーゲンの案内状に関する主張を取り下げたが,この案内状は,従来の案内状に後から本件商標を貼付するなどして作為的に加工したものであると考えられる。

e その他

原告は,甲21の1~25は中国製であるので,これら商品について,胸の部分に本件商標を表示することを指示する指図書等と,これら商品が輸入されたインボイス等の提出を求めたが,被告からは,原告が求めた証拠を提出することはなく単に下げ札のインボイス等(甲28の2~4)が提出されただけである。

(エ)このように,被告が提出した証拠には,いずれも重大な疑義があり,真正なものと認めることは到底できない。これに対し審決は,原告のいずれの主張も,原告が本件審判請求の予告登録後に行ったことであるから,本件商標の使用は否定されないと判断した(16頁11行~15行)が,原告の指摘及び主張については何ら判断していない。

以上のとおり審決は,証拠の評価を誤った結果,本件商標の使用を認める判断をしたものである。

イ 取消事由2(手続違背)

審決は,被告(被請求人)より提出された各書面,書証により,本件審判請求の予告登録日前3年以内に被請求人によって本件商標が被服に使用されたことまでが否定されるものではないと判断するのが相当であるから,請求人より申請のあった証人尋問・検証については,これを行わなかったとする(審決16頁15行~17行。)

しかしながら,上記アのとおり,被告が提出した証拠は重大な疑義を生じさせるものであり,これら証拠のみでは本件商標の使用の事実を判断することはできないはずであって,他の具体的事実・証拠に基づく確認が必要であった。この点を明らかにするためにも原告が申請した証人尋問・検証は必要であり,審決のこのような一方的な認定は手続的に明らかに瑕疵がある。

さらに被告が提出した平成18年9月7日付け上申書,平成18年10月13日付け答弁書(第2回)及び平成18年12月18日付け上申書は,本件審決送達後の平成19年6月29日に発送され,原告はこれら書面を平成19年7月2日に受領したものであるが,これら被告の主張のうち特に新たな証拠を提出した答弁書(第2回)については,証拠も上記アのとおり成立が真正なものとはいえないと考えられるのに,原告に主張立証する機会を与えなかった。

このように,これら手続上の瑕疵は審決の結論に影響を及ぼすものであり,審決は違法なものとして取り消されるべきである。

ウ 被告の主張に対し

被告は,甲5,7,8のタグ表面に表示されていた商標は,被告が権利者である別件登録商標(登録第4917238号,乙7。被告別件商標)と社会通念上同一の商標であると主張する。

しかし登録第4917238号の商標(乙7)は下記に示すとおりの構成であるが,本件商標とは,その図形部分の態様が大きく異なっており,社会通念上同一とはいえない。

2 請求原因に対する認否

請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。

3 被告の反論

審決の認定判断に誤りはなく,審決を取り消すべき理由はない。

(1) 取消事由1に対し

原告は,審決における証拠評価の誤りを主張し,本件商標が商品「被服」について使用されていると認定した審決の判断は違法であると主張するが,審決における証拠評価は適正であり,原告の主張は妥当でない。

ア 原告は甲21の1~23の2について,その成立の真正ないし証明力に疑義があり,これら証拠による本件商標の使用を認めることは到底できないと主張するが,審決において認定されているとおり,これらの証拠の成立及び証拠力には何ら不自然な点はない。よって,原告のこの点に対する主張は妥当でない。

イ 原告は,原告の社員が平成18年6月22日に株式会社マルエツのFoodexpress新大塚店及び錦糸町店に行ったが,被告の商品が販売されている事実は確認できず,また,東京都のマルエツで衣料の取扱いのある店は,葛西クリーンタウン店,真中店,中里店,かまた店,新糀谷店,錦糸町店のみで,これら店舗に電話で問い合わせたが,いずれの店もパリス商品のレディスTシャツはないとの回答を得たとするが,マルエツの店舗は首都圏を中心に193店舗(平成18年10月1日現在)あり(甲32),東京都以外でも140店舗があって(同前,上記報告書に記載されている平成18年6月22日の時点でも,前記店舗数に近い店舗が存在したことは容易に推測できる。

したがって,東京都の8店舗のみの,且つ調査当時の販売状況を調べた結果で,ティーシャツが販売されたことを否定することができないことは当然であり,また,電話での問い合わせについても,問い合わせ当時のことをいっているにすぎず,過去に販売されたことがあるかどうかの認識は表明されていない。

よって,この点についての原告の主張は妥当ではない。

ウ 原告は,甲21の2の1,22の2の1,23の2,34について,被告から大丸ピーコックへの納品書の用紙と,はかりや(B)からアオイケ(C)への納品書の用紙が同じであって「チェーンストア統一伝票(手書用」という同じ伝票が使用されているのは不自然であるとするが「チェーンストア統一伝票」は,手書用,タイプ用,ターンアラウンド型などの各種の様式を有する伝票であり,チェーンストア協会の会員でなくとも誰でも購入できるものである。(乙1)

また,被告から株式会社大丸ピーコックへの納品書(甲23の2)と,はかりやからアオイケへの納品書(甲34別紙⑦)とは,印刷されているフォント(字体)が異なっており,両者は明らかに異なるプリンタにより印刷されたものである。被告とはかりやは別々にチェーンストア統一伝票を購入し,使用したことは明らかである。

加えて,原告は,甲34別紙⑦には検印らしきものがなく,従って,これが真正なものであるとは認められないと主張するが,はかりやからアオイケへの販売は,アオイケことCがはかりやの営業所に来所し,その場で行われたものであり,ネクタイの売主であるはかりやの手元に残る納品書(控)に対してわざわざCからの検印は受けていない。

よって,検印がないとしても納品書(控)が真正でないということにはならず,原告の主張は妥当でない。

エ 次に原告は,甲28の1の下げ札の発注書について,本件商標部分の色指定がないとの主張をしているが,この下げ札の発注時(2005年〔平成17年〕12月21日)より以前の2005年〔平成17年〕8月30日に,被告から上海山悠制衣有限公司(以下「上海山悠」という)に対して本件商標を表示したシールの印刷を発注しており,その際に本件商標の画像データをフロッピーに記録して上海山悠に送っている(乙2)

したがって,下げ札の発注時において本件商標の色指定をしておらずとも,本件商標の画像データがすでに上海山悠に存在する以上,下げ札の印刷は何ら問題なく行える。

また,原告は,中国の会社への発注であれば,日本語より英語で書くのが一般的であると主張するが,上海山悠の担当者(任)は日本語を理解できるので,同社とは日本語による通信が可能である。

さらに,原告は甲35の陳述書について,陳述した日付が記載されていないので,その記載の形式・態様から,被告側で自己の主張に沿った陳述内容を作成し,作成名義人において,単に署名捺印したにすぎないと推測できる旨主張するが,どのような理由により,日付が記載されていないことをもって自己の主張に沿った陳述内容を被告側で作成し,作成名義人が単に署名捺印したにすぎないというのか明らかでない。

当該陳述書にはCの署名及び捺印がされており,また,添付のネクタイの写真との間に割り印まで行っているのであり,Cは陳述書の内容を認識した上で署名捺印を行ったことは明らかである。

オ その他原告は甲20の1~5の有限会社フランタリーによるバーゲンの案内状について言及するが,これら証拠については既に審判段階でも主張したとおり,本件商標と商品とが近接していないため両者の関連性が明確でないこと,及び通常使用権者が商品自体に本件商標を付して販売したことがないことが判明したことなどから当該主張を既に取り下げたものであり原告の主張は妥当ではない。

以上のとおり,原告による上記主張はいずれも妥当ではなく,被告による本件商標の使用の事実について疑いを生じさせるような事実はない。

カ 本件商標の通常使用権者による使用

被告は,平成17年9月20日に,大阪市淀川区木川東4丁目11-13(現在の営業地は,大阪市北区大淀中1丁目15-5)の「はかりや」ことBに対し本件商標の使用を許諾した。

この点に関し「商標使用許諾契約書」の写し(甲33)が既に提出されている。そして「はかりや」は,平成17年11月頃に,本件商標を付したネクタイのサンプル品を,ストライプ,チェック,小紋の3種類の柄で100本製造することを韓国の「YUM YUNG CO」に注文し,該サンプル品は,平成17年11月28日に中国の「ZHEJIANG SHENGZHOU ATCHIM TIE&FASION CO.LTD」から「はかりや」に納入されている(甲34。)

そして,上記サンプル品の裏側に,本件商標をカラーで印刷したシールが貼付されている。なお,該シールは「はかりや」が被告から受け取った本件商標の見本に基づきその態様を「ZHEJIANG SHENGZ HOU ATCHIM TIE&FASION CO ,LTD」に指示し,中国においてネクタイに貼付されたものである(甲34。)

上記サンプル品のうち50本は「はかりや」から「ネックファッションアオイケ」の屋号でネクタイの販売を行っているC氏に,平成18年1月26日付けで販売されている(甲34別紙⑦,甲35。)この点,原告は甲34別紙⑦の納品書(控)が真正なものでないと主張するが,原告のこの主張が妥当でないことは既に反論したとおりである。そして,ネクタイは本件商標の指定商品「被服(第25類)」に含まれることが明らかである。したがって,本件取消審判の予告登録日(平成18年3月27日)より3年以前に,本件商標は通常使用権者によりその指定商品「被服」に使用されていることは明らかである。

(2) 取消事由2に対し

原告は,原告が申請した証人尋問,検証を行わなかったことについて審決の手続上の瑕疵であると主張するが,そもそも当事者が申し出た証拠方法について,審判官が必要でないと判断した場合には,取り調べることを要しないものであり,審決にも記載されているとおり,被告から提出された各書面,書証により本件商標の「被服」に対する使用を認定し得た以上,これらを行わなかったことが直ちに違法となるものではない。

この点について手続上の瑕疵であるとの原告の主張は論理的に飛躍がある。

さらに,被告の提出に係る平成18年9月7日付け上申書,平成18年10月13日付け答弁書及び平成18年12月18日付け上申書が本件審決送

達後に原告に送達されたという点の主張についても,これらの書面における被告の主張に関しては審決において採用されていないことから,原告に反論の機会が与えられなかったことをもって直ちに違法であるとする主張は妥当でない。

(3) 被告の主張

原告が大丸ピーコック武庫之荘店にて,2006年〔平成18年〕6月12日付けで購入したとされる商品(甲5)及び2006年6月14日付けで購入したとされる商品(甲7,8) のタグ表面に表示されていた商標は,被告所有にかかる登録商標(商標登録第4917238号)と社会通念上同一の商標である。この商標については,本件取消審判の予告登録日前から使用していた。

よって,被告は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたから,本件商標の使用についてこれを認めることができる。

当裁判所の判断

1 請求原因

(1)(特許庁における手続の経緯)

(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。

2 商標権者等による登録商標使用の有無

(1) 本件は,原告がなした不使用取消しの審判請求(商標法50条)につき特許庁が商標権者による使用の事実が認められるとして請求不成立の審決をなしたことから,請求人たる原告がその審決の取消しを求めた訴訟であるところ,商標法50条2項は「前項の審判の請求があった場合においては,その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない…」と定め,また商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されると解される(最高裁平成3年4月23日第三小法廷判決・民集45巻4号538頁参照)ことから,本件訴訟の口頭弁論終結時までに取り調べられた全証拠により,被請求人である商標権者(被告)において,上記「使用」の事実を証明したと判断されるときは本件不成立審決が維持され,そうでないときは本件不成立審決が取り消されるべきこととなる。

そして,本件においては,以下に述べる次第で,商標権者たる被告において上記「使用」の事実を証明したということはできないから,本件審決は取り消されるべきこととなる。

(2) 本件における基礎的事実関係

証拠(各認定事実の末尾に摘示した)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

ア 被告は,昭和56年1月13日に設立された「1.日用雑貨.衣料品.家庭用電化製品.スポーツ用品.美術工芸品等の販売及びその輸出入,2.前号に附帯する一切の業務」を目的とする株式会社である(商業登記簿)。被告の前身は,昭和35年ころに現在の代表者であるDが「大和」という屋号で雑貨及び日用品販売業を始め,これを昭和40年ころに法人として設立した株式会社進和である。株式会社進和はギフト雑貨卸し業をし,ドウシシャ,現在のドンキホーテ,ダイソー等と取引をした。その後昭和56年1月に株式会社進和の貿易部門を分社化して設立したのが被告であり,Dはその代表取締役に就任した(乙77)。被告は設立当時からスポーツアパレル用品を取り扱っていた。被告の本店は,当初大阪市中央区本町の登記簿上の本店所在地に置かれていたが,平成5年に物流に便利であるとして箕面市船場団地にこれを移転した。しかし現在に至るまで登記簿上の本店所在地は移転されていない(乙77。)

イ 本件商標は,瀧井株式会社及び株式会社パリスにより,昭和42年1月17日に連合商標として商標登録出願され(指定商品「被服,布製身回品,寝具類」),昭和43年1月25日に出願公告された。その後,昭和45年4月2日に登録査定がされ(乙17の6),昭和45年6月20日商標登録第861694号として設定登録を受けた。

そして,昭和49年1月31日に指定商品の一部である「寝具類」について放棄がされて昭和49年6月12日にその旨の登録がされ,昭和56年2月27日,平成2年6月27日には,それぞれ存続期間の更新登録がされた。また,昭和55年10月20日には滝井開発株式会社に対して本件商標の移転登録がなされ,また平成8年12月2日に登録名義人の表示が変更されてケイワン企画株式会社となり,その後さらに被告に本件商標権の譲渡がなされ,平成12年2月10日にその旨の移転登録がなされた(以上につき甲18の1。)

なお,本件商標については,昭和58年1月24日登録をもって株式会社パリスのため通常使用権設定登録がなされている(甲18の1。)

ウ 原告が特許庁に対し,不使用による本件商標の取消審判請求をしたのは前記のとおり平成18年3月6日であり,取消し審判の予告登録がなされたのは平成18年3月27日であるが,被告は,上記審判事件における答弁(第1回)において,①被告から本件商標の通常使用権の設定を受けた有限会社フランタリーが,衣服の販売(バーゲン)の案内状を発送することにより本件商標を使用しているとして,甲19の1~20の5〔審判乙2の1~3の5〕を提出し,②被告自身による本件商標の使用例の一例として,大丸ピーコック武庫之荘店に対し平成17年11月14日ないし平成18年3月23日に「ウインドジャケット」(商品番号6813500)「1 ・ティーシャツ(長袖,黒)」(商品番号63116001・ポロシャツ(半袖,ピンク)」(商品番号63116101)を販売したとして,甲21の1~23の2〔審判乙4の1~6の2〕を提出した。

エ その後被告は,審判段階における平成18年6月5日付け上申書で,③ 「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116006)に関し,平成18年2月24日に株式会社マルエツに対し5枚,「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116007)5枚をそれぞれ販売したと主張して,甲24の1~24の2の2〔審判乙7の1~7の2の2〕を提出し,また平成18年3月23日にブルーピーター株式会社に対し「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116006)を4枚「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116007)を4枚,それぞれ販売したと主張して,甲24の3の1,2〔審判乙7の3の1,2〕を提出した。

オ ところが被告は,審判手続において請求人たる原告からの弁駁及び後記甲1(Aの報告書,審判甲1)の提出を受け,上記①の通常使用権者有限会社フランタリーによる本件商標の使用に関しては,本件商標と商品との関連性が明確とはいえずまた通常使用権者も商品自体に本件商標を付して販売したことはない等として,通常使用権者による使用の主張を撤回した。

カ 上記甲1(Aの報告書)及びこれと関連する甲13(ブランディインターナショナル株式会社の商標調査報告書)の内容は概ね下記のとおりである。

(ア)甲1(審判甲1,平成18年7月5日付け)

「取消2006-30309に関し,被請求人から提出された証拠に基づいて,本件商標が付された商品が現実に販売されていたか否かの確認等を行ったので,ここに報告致します。

1.6月12日(月)12時~13時大丸ピーコック武庫之荘店を視察・ICCのパリス商品が陳列されているのを確認する(ポロシャツ,ウインドブレーカー,ベスト,ゴルフシャツ,Tシャツ。…)

・パリス商品を1点購入(品番63116101)… したが,答弁書にある同品番の写真の商品…と異なる。

・本件商標の表示は見当たらず,店員に聞いてみたところ『図柄を付した商品はあまり記憶にない』とのこと。

2.6月13日(火)PM大丸ピーコックに電話

・大丸ピーコックのホームページにおける店舗リストをもとに,まず, 千里大丸プラザ店に電話で問い合わせたところ,パリス商品の取り扱いはないとのこと。

・その後,数店舗に電話するがいずれも衣料品の取り扱いがなかった。

・大阪,兵庫の店舗で衣料の取り扱いがあるのは,千里大丸プラザ店,香里店,名舞店,武庫之荘店の4店舗のみということが確認できた。

・武庫之荘店を除く残りの3店舗に電話したが,パリス商品の取り扱いはないとのこと。

3.6月14日(水)11時半~12時半 再度,大丸ピーコック武庫之荘店を視察

・メンズ,レディス商品を合計5点購入…したが,品番63116001…は,答弁書にある同品番の写真の商品…と異なる。4.6月15日(木)11時~12時箕面にある(有)フランタリーを視察

・当社のEとともに,通常使用権者である大阪府箕面市船場東に存する㈲フランタリーの事務所に行く。

・室内ではパリス商品であるスラックスが多数陳列されていたが,本件商標を付したものは見られなかった。

・スラックス以外の商品はあるかと聞いたところ,隣の部屋からポロシャツを数点出してきてくれた。いずれも2万円前後のさげ札に半額以下の赤札をつけてセールで販売している様子。ポロシャツ及びスラックスに使用している表示は本件商標ではない。5.6月22日(木)マルエツ(東京都豊島区東池袋)の視察等

・当社の東京店勤務のFにマルエツの視察を依頼。

・Fが14時20分,豊島区東池袋5-51-12に所在するFoodexpress新大塚店を訪問。この店舗は,一階が食品専門の店舗で2階以上がマルエツの本部になっている模様。店内には衣料品はなく,念のためレジで衣料品の取り扱いの有無を尋ねるが,扱っていないとの回答を得る(略。)

・Aが16時半~17時にかけて,マルエツのホームページにある店舗リストをもとに,電話で問い合わせをする。

・東京都で衣料の取り扱いがある店舗を尋ねると,葛西クリーンタウン店,真中店,中里店,かまた店,新糀谷店,錦糸町店の6店舗があげられた。

・その後,上記の6店舗に電話で問い合わせると,確かに衣料の取り扱いはあるが,パリス商品であるレディスTシャツはないとのこと。以上」

(イ) 甲13(審判甲13,平成18年6月26日作成)

「1.調査判明事項

① 株式会社大丸ピーコック武庫之荘店に来店し,パリスのTシャツの購入の旨を伝えたところ,シャツ3種類(ピンク,ブルー,ホワイト)のみ販売しているとのことだった。ブラックの取扱の有無を質問したが,販売店員2名ともブラックを販売した記憶がないとの回答であった。また,PARISのロゴの下に図柄の入った商品を販売した記憶はないとの回答であった。

②(略)

③ さらに,株式会社アイ・シー・シーは,大丸ピーコック千里中央店に対しても同様の商品を卸しており,念のために確認したところ,同様の商品は存在したが,胸のところにPARISと記載されているだけで,図柄の入った商品は存在しなかった。

④(略)」

キ一方,被告が審判手続において提出したG名義の署名のある書面(甲27)【審判乙10〕の内容は,以下のとおりである。

株式会社大丸ピーコック関西仕入営業部衣料品部バイヤーであるGは,平成18年9月4日付けの「株式会社アイ・シー・シー殿」と題する書面で「①当社の衣料品取り扱い店舗はつぎの通りになっています。千里中央店香里店,明舞店,松丘店,塚原店,武庫之荘店②貴社から当社への仕入時,商品によってアソートで(たとえば取扱品番が同じで商品又は材質が異なるものの納品)で納品してもらうことがあります」として,署名をしている(押印はない。)

クまた,原告が当審において提出した陳述書(甲38~40)の内容は以下のとおりである。

(ア)株式会社リオンドール取締役H

「…当社は,…数々の衣料品のブランド品を扱っていますが,品番を転用することはしません。また,品番が同じで,商品又は材質が異なる商品を納品してもらうこと(アソート)はありません。…品番が同じで商品又は材質が異なる商品で納品すること(アソート)をすれば, 販売数量や在庫数が全く掴めなくなりますが,どのようにして管理するのか,ノーブランドの商品であれ,ブランド品であれ,全く想像できません。」(甲38。)

(イ)オクイ株式会社代表取締役I

「…商品の品番は,下げ札の発注者が直接印字することが多いですが,私は,長年,数々の服飾メーカーと接してきましたが,商品が違うのに,同じ品番を付けるということを今まで聞き及んだことがありません。品番が同じで商品が異なる商品で納品するようなこと(アソート)は,商品の管理上,問題があると思います。…(甲39)」

(ウ)サン・グリーン・リバー株式会社代表取締役J

「…テレビキャラクター子供服の販売に従事してきた…。…品番が同じでグラフィックデザイン又は材質が異なる商品を納品した事はございません。又,通常の衣料品製造販売会社ならこのような事はしないと思います。当社の販売先である量販店も当然このような仕入をしていません。グラフィックデザイン又は材質が異なる場合は,別品番を使用します。特にブランド商品に関しましては,ブランド版権元への詳細な売上報告(デザイン毎の販売数量,在庫数量等)が義務付けられていますので,品番が同じで材質が異なるような事は考えられません(甲40)。」

ケ被告と「はかりや」ことBとの関係

(ア)被告と「はかりや」ことBとの間の平成17年9月20日付け商標使用許諾契約書(甲33〔審判乙16〕)には以下の記載がある。

「商標使用許諾契約書

株式会社アイ、シー、シー(以下甲という)とネックファッションはかりや(以下乙という)とは,次の通り商標使用許諾契約を締結する。

第1条(趣旨)

① 甲は,乙に対し,甲の管理運用する下記商標(以下本商標という)を下記商品(以下本商品という)に使用し全世界において製造し,日本国内において販売することを許諾する。

商標:861694号,4741695号,4756860号

商品:紳士ネクタイ,紳士サイフ,紳士ベルト(スラックス用)

② 甲は,本契約期間中に,乙の事前の同意なしに第三者に本商品と同一の商品については,本商標の使用を許諾しない。この為, 甲と乙は,本契約において本商標及び本ノウハウの使用権並びに本商品の製造販売に関する諸条件を取り決めることとした。

第2条(譲渡禁止)

乙は,本契約に基づく権利を第三者に譲渡,貸与または担保に供してはならない。尚,再許諾を行う場合は事前に書面による申し入れを行い,甲の承認を得るものとする。

第3条(対価)

本商標の使用料(ロイヤルティ)及び年間保証額は下記のとおりとする。

① 本商標の使用料:年間…万円(…万円×3)

② 年間保証額:

初年度:…円(2006年1月1日~2006年12月31日)

2年度:…円(2007年1月1日~2007年12月31日)

3年度:…円(2008年1月1日~2008年12月31日)

乙は甲に対し本件商標使用の対価のロイヤリティとして,上記の初年度のロイヤリティを契約調印後1ヶ月以内に支払うものとする。またこれをもって契約成立とする。

2年度からは年度の始まる2ヶ月前までに支払うこととする。本契約書に従って支払われたロイヤリティは,いかなる事由が発生しようと返還されないものとする。

③ 乙は,6カ月毎に販売した本商品の売上報告を甲の所定の用紙に記載し,乙の役員の1人が証明の上,提出日に提出するものとする。

報告書提出日期日報告対象期間

毎年7月15日1月~6月

毎年1月15日7月~12月

④ 乙は,本契約に基づく使用料を支払う都度,各支払額に消費税法で定められた税率を乗じて得た金額の消費税を上乗せして甲に支払うものとする。(以下略)」

(イ) また,Bの陳述書(甲34〔審判乙17〕 。平成18年10月6日付け,特許庁あて)には以下の内容が記載されている。

「1.当社の履歴

私は,昭和60年頃より今日において『はかりや』の屋号で,ネクタイ及びワイシャツの製造販売を行っています。そして,その営業地は,平成17年9月30日までは大阪市淀川区…で,同年10月1日以降は現在の大阪市北区…です。

2.当社と株式会社アイ、シー、シーとの関係

株式会社アイ、シー、シー(以下「アイ、シー、シー」といいます)のD氏とは3年か4年前に知り合い,現在も仕事上の付き合いがあります。

3.本件商標の使用許諾を得た経緯

(1) 私は, アイ、シー、シーが『PARIS』の文字の入った商標を所有していることを以前から聞いて知っていました。私は,その商標をネクタイに使いたいと思い,平成17年9月頃に箕面市にあるアイ、シー、シーの本社に出向き,パネルに入った商標を見せてもらいました。…

そして,私は,D氏に本件商標他2件の「PARIS」文字の入った商標の使用の許諾を申し入れ,同氏と交渉した結果,平成17年9月20日付で,別紙②の商標使用許諾契約が成立しました。

(2) 現在は,本件商標をネクタイについて使用しています。また,前記の契約の交渉過程で,本件商標の使用の仕方は,ネクタイ業者が普通に行っている,ネクタイの裏側にその商標を表したシールを貼る方法でよいということで合意しています。また,ネクタイ等の生産数量に制限がないことも合意しています。

4.本件商標を付したネクタイのサンプル品の製造

(1) 私は, 平成17年11月頃に,本件商標を付したネクタイ(以下「本件ネクタイ」といいます)のサンプル品を,ストライプ,チェック,小紋の3種類の柄で100本製造することを,韓国の「YU MYUNG CO.」に注文しました。そして,これらのサンプル品は平成17年11月28日に,中国の業者の「ZHEJIANG SHENGZHOU ATCHIMTIE&FASHION CO.,LTD 」から当社へ納品されました{このときの書類が別紙③…別紙⑥です。}

(2) そして,これらのサンプル品には,本件商標をカラーで印刷したシール(…)を,それぞれの裏側に貼付しました。

なお,ネクタイに貼るシールの大きさや形はほぼ決まっていますので,前記のシールは,私がアイ、シー、シーから受け取った本件商標の見本に基づいて商標の態様のみをネクタイの製造業者に指示し,その指示に基づいて同製造業者が中国において作成したものです。そして,私の指示に基づいて,同製造業者が前記シールをそれぞれのネクタイに貼付しました。

5.本件ネクタイのサンプル品の販売

(1) 前記サンプル品は,サンプル品として提示したり,通常の商品として販売して,今は手元に残っていません。通常の商品として販売したなかで,記憶に残っているものは比較的多数を販売した『アオイケ』への販売です。今般,過去の伝票等を探しましたところ,その販売の明細は下記のとおりであることが確認できました。

平成18年1月26日に,三重県…の「ネックファッションアオイケ」ことC氏へ,50本を販売した(…がそのときの納品伝票の写しです。)

(2) 上記の「アオイケ」への販売は,C氏が当方の店舗に来たときの口頭での注文に対するものです。

6.本件ネクタイのその後の製造販売前記サンプル品の製造販売の後,本年春の本格的な販売のために,本件ネクタイの7,000本の製造を上記の韓国の「YUMYUNG CO」に注文し,平成18年4月にそれらが上記の中国の業者から当社に納品されました。しかし,これらネクタイの「品質ネーム」の表示が間違っていたので,現在当方で「品質ネーム」の取替えを行っていて,その取替えを終わったものから本年の秋以降に販売することにしています。

これらのネクタイには,上記のサンプル品に貼付したシールと同じシールを,…ネクタイの裏側に貼付しています。以上」

なお,甲34添付の別紙③2005年〔平成17年〕11月23日付け中国の「ZHEJIANG SHENGZHOU ATCHIMTIE&FASHION CO ,LTD(浙江.州晨寛領帯服飾)有限公司」から韓国ソウルの「YUMYUNG CO.」「INVOICE (請求書)と題する書面であり「100%シルク製プリントストール2300ケ」「100%シルク織ネクタイ100ケ」,「100%シルク製プリントネクタイ240ケ(いずれも抄訳による)に関するものであり,同別紙④は,2005年〔平成17年〕11月23日付け「YUMYUNG CO」から「はかりやネクタイファッション」に宛てた上記ストール,ネクタイについての「COMMERCIAL INVOICE (商業請求書,同別紙⑤」)は「ZHEJIANG SHENGZHOU ATCHIMTIE&FASHION CO ,LTD 」から「はかりやネクタイファッション」へ発送した際の2005 年〔平成17年〕11月23日付け原産地証明書(表題は「COPY(写し)と記載,同別紙⑥は2005年〔平成17年〕11月26日積荷証書である。また別紙⑦は,平成18年1月26日付けの「納品書(控)」と題する書面であり「取引先名Neck Fashon はかりや」「社店名アオイケ様」,品名に「シルクブランドタイ」,数量に「50」との記載があり,原単価,原価金額等は炭塗りされている。

(ウ) B は被告に対し「パリスブランド代」ないし「パリスロイヤリティ」として,平成17年10月2日,平成19年5月16日に,それぞれ52万5000円を支払った(乙8,乙9の1,2 。)

(エ) C の陳述書(平成18年10月〔日付は空白。甲35〕 〔審判乙18〕) には, 以下の内容が記載され,別紙として添付された写真には,本件商標がネクタイの小剣部分にシールにより貼付されている。

「1.私は『ネックファッションアオイケ』の屋号で,平成9年5月より今日まで継続してネクタイの販売を行っています。

2 .私は,平成18年1月26日付で『はかりや』さんから,シルクのネクタイを50本購入しました。そして,前記のネクタイは,現在までに全て販売しました。

3.前記のネクタイには,添付の写真に写っているシールと同じものが貼られていたと記憶しています」。

(オ)当審におけるB証人(平成20年3月12日施行)の証言の概要は,以下のとおりである。

・ 被告との商標使用許諾契約では,ネクタイの作成数量に限定はなく,作り放題であり,ライセンス料は一定額である(尋問調書2頁。)

・ 商標使用許諾契約第3条③に定められた売上げの報告については全くしておらず,被告からこれについての督促などもない(同3頁。)

・ ネクタイの小剣の裏側に本件商標のシールを貼付したが,シールを貼るよう指示したのは被告であり,小剣の裏側に貼ることとしたのは自分(B)の考えである(3頁~4頁。)

・ 被告と商標使用許諾契約を締結した後,被告から本件商標等に関し, データ,カラーコピー,シール等を受け取った(尋問調書4頁~5頁)。

・ 韓国のYU MYU NG商事に発注する際に,本件商標のカラーコピーを必要な分だけ送り,これをネクタイ100本に付けてくれと頼んだ(5頁。)

・ 初めて輸入したシルクプリンテッドストールと一緒にPARISのネクタイのサンプル品を100本を入れれば分かるのでストールと一緒にYUMYUNG商事に注文した(同5頁~7頁。)

・ 甲34の別紙⑦の納品書にあるシルクブランドネクタイ50本がそれである(同7頁。)

・サンプル品として輸入した他に,7000本くらい発注したが,ネームの間違いに気付き販売をストップした(同8頁。)

・ サンプル品のネクタイの小剣の裏側に本件商標のシールを貼ったが,これが「ネクタイ屋」の常識であり,特に意味はない。ついていればブランド品であることが示され,客が喜ぶのではないかという程度の意味である(同8頁~9頁。)

・ 本件商標のシールについては,購入後客に取ってもらうことを予定している。洋服でMとかLとか書いてあるシールを買った後取るのと同じ感覚である(同12頁。)

・ サンプル品として作成した分のうちアオイケに販売した後の残り50本のネクタイもどこかに販売されたと思うが,自分の他に社員もおり,分からない(同13頁。)

・ その後7000本発注した分は問屋に卸したが,取引先のどこに売ったかは分からない(同19頁。)

・ アオイケことCは,会社や警察の休み時間に行ってそこで展示して販売したりといった行商を営んでいる(同23頁。)

・ 本件商標のシールは,被告から渡されたは1枚の紙で10枚か20枚であったが,これをサンプルとして中国に送り,100本のネクタイに貼られていた。足りない分のシールはYUMYUNG商事が中国のどこかの外注で作ったと思う(同27頁。)

・ 被告のPARISのブランドも,たいしたブランドではない。あってもなくてもいいものである。年間50万円の使用料では高く,2,30万円くらいのものと思う(同30頁。)

・ 被告がなぜ本件商標のシールを貼ってくれという希望を出したのかは分からない(同31頁。)

(3) 本件商標の使用の有無についての検討

商標権者たる被告が審判及び本件訴訟を通じて維持している本件商標の使用に関する事実主張は,平成15年3月27日から平成18年3月27日までの3年の間に,①本件商標の商標権者たる被告は株式会社ピーコックへの販売において本件商標を使用した,②同じく被告は株式会社マルエツ,ブルーピーター株式会社への販売において本件商標を使用した,③被告から本件商標について通常使用権の設定を受けた「はかりや」ことBにおいて本件商標を使用した,④被告は本件商標と社会通念上同一の商標である登録第4917238号商標(乙7)を使用した,というものである。

ア まず上記①の株式会社大丸ピーコックへの販売による本件商標の使用の点に関し,被告は大丸ピーコック武庫之荘店に対し,品番68135001のウインドジャケット6枚を平成17年11月14日に販売し(甲21の2の1,2),この品番68135001のウインドジャケットの胸には本件商標が刺繍されていた(甲21の1)とし,また同じく大丸ピーコック武庫之荘店に対し,平成18年3月23日,品番63116001のVネックの長袖ティーシャツを(甲22の2の1,2,品番63116101)のポロシャツ10枚を(甲23の2)それぞれ販売したとし,品番63116001のティーシャツの胸(甲22の1),品番63116101〔品番の記載された下げ札には綿100%の記載がある〕のポロシャツの胸(甲23の1)にはそれぞれ本件商標の刺繍がされていたとする。

しかし,甲5は上記甲1記載のとおり,原告の社員でライセンス部所属のAが平成18年6月12日に大丸ピーコック武庫之荘店で購入した青色の半袖ポロシャツの写真であるところ,下げ札には商品番号として「63116101」と記載されているが,胸には「PARIS」の文字の刺繍があるのみでとする本件商標の刺繍はなく,また下げ札に記載された素材も「身生地綿70%,ポリエステル30%,衿部綿100%」と記載されている。

さらに,甲7は同じくAが,平成18年6月14日に大丸ピーコック武庫之荘店で購入した黒色のティーシャツの写真であり,下げ札には甲22の1と同じ商品番号「63116001」の記載があるが,甲22の1のものは長袖,Vネック,模様は胸の刺繍のみであるのに対し,甲7のものは半袖,丸首であり,胸に本件商標の刺繍はなく「PARIS SPORT」の文字の他,花の図柄4点の模様があるなど,外観が全く異なる。この点につき, 株式会社大丸ピーコック関西仕入営業部衣料品部バイヤーGは,上記のとおり平成18年9月4日の「株式会社アイ・シー・シー殿」と題する書面(甲27)で,被告からの仕入時に,商品によって取扱品番が同じで商品又は材質が異なるものを納品してもらうことがあるとするが,そうすると被告の主張するとおりの品番の商品が販売されたとして,これと被告主張の本件商標の刺繍等が付された商品との同一性についても疑問が生じるというべきである。

原告は,同一の品番で商品ないし品質が異なる商品を納入することが業界慣行としてありえないとし,これに沿う証拠として上記甲38ないし40の陳述書を提出している。上記によれば,被告による株式会社大丸ピーコックに対する販売について,本件商標が使用されたとする事実については,これを認めるに足りないというべきである(PARIS)」とする部分については,使用されたと認める余地があるが,これだけでは本件商標が使用されたということはできない。

イ 次に,株式会社マルエツ,株式会社ブルーピーターに対する販売について検討する。

被告は「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116006,63116007)をそれぞれ平成18年2月24日に株式会社マルエツに対し販売し,また平成18年3月23日にブルーピーター株式会社に対し「ティーシャツ(半袖,黒)」(商品番号63116006,63116007)をそれぞれ販売したとし,その商品に付された下げ札の裏面に本件商標を表示したとする。

しかし,上記甲1によれば,マルエツに対し原告の社員らが訪問,問い合わせを行った範囲では被告が販売したとする女性用ティーシャツの取扱いの事実が確認できず,さらに原告が被告に対し,株式会社マルエツ,ブルーピーター株式会社の担当者を明らかにし立証するよう求めたにもかかわらず,被告は当審においても更なる主張立証を行わない。

なお,被告は裏面に本件商標を印刷した商品下げ札を中国の業者に発注し,その納入を受けたとし,甲28の1~29の2〔審判乙11の1~12の2〕を提出する。なるほど平成17年12月21日付け「下記下げ札発注お願いします」と記載された書面(甲28の1)の下げ札の裏面右上には本件商標が印刷され,平成18年2月14日付け出荷表(甲28の4)では「PARIS 商標」として中国から5100枚が出荷されているものの,この下げ札が実際に使用されたか否かは不明といわざるを得ない。

上記によれば,株式会社マルエツ,株式会社ブルーピーターに対する販売において,本件商標が使用されたとは認めるに足りないというべきである。

ウ 次に,通常使用権者である「はかりや」ことBによる本件商標の有無について検討する。

「はかりや」ことBは,証人尋問において,平成18年1月26日に,「ネックファッションアオイケ」ことCに対しネクタイ50本を販売したところ,そのネクタイの小剣の裏側に本件商標のシールを貼付したとする。

しかし,B証人の証言は,本件商標のシールに関し,被告から渡されたは1枚の紙に10枚か20枚であったところ,これをBがサンプルとして中国に送り,納品された100本のネクタイに貼られていた,足りない分のシールはYU MYUNG 商事が中国のどこかの外注で作ったと思う(尋問調書27頁)などとするが,この足りない分のシールの作成,貼付等に関しては甲34の別紙③ないし⑥の請求書等には全く記載がなく,その他これを裏付ける証拠も提出されていない。また,Cに対する50本の販売のほか,残った50本に関しては全く分からない,その後の何千本かの販売に関してもどこに販売したかは分からないとするなど,客観証拠との整合に疑問がある上に重要な内容につき曖昧な点があり,措信することができない。同人作成の陳述書(甲34〔審判乙17〕)の記載内容のうち本件商標のシールをネクタイに貼付したことに関する部分についても同様である。

また被告は,Cの陳述書(甲35〔審判乙18〕)を提出したのに,証人としての出頭は困難であるとして被告からの証人申請を行わない。(原告からの証人申請はある。)

そうすると,通常使用権者である「はかりや」ことBが本件商標を使用した事実についてもこれを認めることができない。

エ さらに被告は,本件商標と社会通念上同一の商標である下記商標(乙7)を使用していると主張する。

しかし,被告の有する商標(登録第4917238号,乙7。以下「被告別件商標」という)の内容は下記のとおりであるところ,下記被告別件商標と本件商標とは,猛獣が2頭向き合い装飾が施されて構成される図形部分において,猛獣の表情及び姿勢,猛獣の口から出て上部に向かう装飾,猛獣の足下の装飾が繋がっているか否か,図形部分が枠で囲まれているか等につき明らかな違いがあり,社会通念上同一の商標とはいえないというべきである。

(構成)

(出願日)平成17年2月18日

(登録日)平成17年12月22日

(指定商品)第18類「フランス製のかばん金具〈以下省略〉」そうすると,被告が上記被告別件商標を使用したとしても,被告が本件商標を使用したことにならないことになる。

オ 小括

以上によれば,被告は,本件商標の登録取消し審判の予告登録がされた

平成18年3月27日より前3年以内に日本国内において商標権者である被告ないし専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標を使用していたことを証明していないことになる。

3 結語

よって,その余について判断するまでもなく原告の請求は理由があるから,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。

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