知財高裁による審決取消訴訟の判決をピックアップして掲載しています 

平成18年(行ケ)第10080号 審決取消請求事件

主文

1 特許庁が取消2005-30290号事件について平成18年1月19日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

主文と同旨

2 被告

(1) 原告の請求を棄却する。

(2) 訴訟費用は原告の負担とする。

第2 当事者間に争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

原告は,別紙商標目録記載の構成よりなり,昭和56年2月6日に登録出願され,同60年8月29日に設定登録された後,平成7年8月30日及び同17年3月22日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされた登録第1802596号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は,第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として設定登録され,その後,平成17年7月27日に,第5類,第9類,第10類,第16類,第17類,第20類,第21類,第22類,第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び第25類「被服」に書換登録されたものである。

被告は,本件商標の指定商品中の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」につき,その商標登録を取り消すことについて審判を請求し,平成17年4月6日,同審判請求の登録がされた(以下,この登録を「本件審判請求登録」という。)。

特許庁は,上記審判請求を取消2005-30290号事件として審理し,その結果,平成18年1月19日に「登録第1802596号商標の指定商品中『洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』については,その登録は取り消す。」との審決をし,その謄本は同月31日に原告に送達された。

2 審決の概要

審決の内容は,別紙審決書写しのとおりである。その概要は,原告(被請求人)は,本件商標を,その設定登録日以降平成17年1月18日(本件商標の商標権の原告への移転登録日)までは通常使用権者として,同日以降は商標権者として使用しているもので,本件取消審判請求に係る指定商品中の「洋服,コート,セーター類」に属する「ママコート」につき,昭和60年代から現在に至るまで継続して本件商標を使用していると主張するところ,原告が上記期間本件商標をその指定商品に使用する通常使用権を有していたことは認められるが,原告が審判手続において提出した証拠(審判における乙第1,第2号証,第9号証,第10号証,第16ないし第18号証(枝番号を省略。なお,以下,同様に枝番号を省略することがある。)。本件訴訟における甲第1ないし第4号証,第7ないし第9号証)によっては,本件商標を本件審判請求登録前に上記商品について使用していたものとは認め難く,また,原告(被請求人)は,本件商標を取消審判請求に係る指定商品に使用したことについて上記証拠のほか何ら立証していないから,結局,本件商標は,本件審判請求登録前3年以内に商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が取消審判請求に係る指定商品について使用したことの証明がないことに帰する,というものである。

第3 原告主張の審決の取消事由の要旨

審決は,本件商標について,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者ないし商標権者である原告により,取消審判請求に係る指定商品につき,商標法2条3項2号に掲げられた商標の使用がされていたにもかかわらず,証拠の評価を誤って当該事実が認められないとしたものであり,この誤りが審決の結論に影響することは明らかであるから,違法として取消しを免れない。

1 本件商標の使用主体等

原告は,子守帯やママコート等の製造販売を業とする株式会社であるところ,平成17年1月18日に本件商標の商標権者であった原告代表者A から譲渡を受けて商標権者となったが,それ以前は本件商標をその指定商品に使用する通常使用権の許諾を受けていた(甲6号証)。原告は,本件商標を取消審判請求に係る指定商品中「洋服」及び「コート」に該当するママコートに以前から継続して使用していたものであり,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者ないし商標権者である原告によって本件商標が使用されていた事実は,関係証拠から優に認めることができる。

なお,ママコートとは,母親が子供を抱いたまま或いは背負ったまま子供ごと覆うこともできるコートで,袖のある典型的なコートタイプのものだけではなく袖のないベストタイプのものも含まれる。

2 2002年秋冬における本件商標の使用

原告は,平成14年(2002年)6月頃,別紙標章目録1の標章(以下「標章1」という。)を付したママコートの下げタグを大日本印刷株式会社に委託して製造し,さらに当該下げタグを付したママコートを同年秋冬にかけて販売し,本件商標を使用した(甲第29号証)。

3 2004年秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2063及びT2364についての本件商標の使用

原告は,平成16年(2004年)に企画開発した秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2063及びT2364を株式会社ヤギに委託して製造していた。株式会社ヤギは,その製造を,さらに中国の湖北美春服装有限公司に再委託していた。

ママコートには,下げタグ(下げ札)に標章1が,襟ぐりの織りネーム(衿ネーム)に別紙標章目録2の標章(以下「標章2」という。)が付されていたが,これらはいずれも社会通念上,本件商標と同一というべきである。織りネーム(衿ネーム)は原告の指示により株式会社ヤギがYKKファスニングプロダクツ販売株式会社から仕入れたものであり,下げタグ(下げ札)は原告が笹徳印刷株式会社に製造させて株式会社ヤギに支給したものである。原告は,株式会社ヤギを介して,中国で製造され,上記のとおり本件商標が付されたママコートを平成16年8月から10月にかけて我が国へ輸入し,同年9月から12月にかけて我が国で譲渡した。

上記の事実は,甲第15号証(2004AWシーズンママコート企画書),第16号証(2004AWママコート資材明細表),第17号証(請求書及びパッキングリスト),第18号証(納品書),第19号証(納品書等),第20号証(納品書,売上伝票等),第23号証(ママコートの写真)及び第34号証(事実実験公正証書)により,明らかに認められるところである。

4 2004年秋冬シーズン用ママコートの品番S5960についての本件商標の使用

2004年秋冬シーズン用ママコートの品番S5960は,袖のないベストタイプのママコートであるが,その製造関係や本件商標の使用状況は上記の品番T2061等のママコートと同様で,原告は,平成16年に株式会社ヤギを介して本件商標が付されたママコート品番S5906を中国から輸入し,同年9月から平成17年1月にかけて我が国で譲渡した。

上記の事実は,甲第4号証(売上伝票),第15号証(2004AWシーズンママコート企画書),第24号証(2004AWママコート資材明細表)及び第25号証(請求書及びパッキングリスト)により,明らかに認められるところである。

5 ママコートの品番S2071についての平成16年における本件商標の使用

原告は,平成15年に株式会社ヤギに委託して製造し,下げタグ(下げ札)に標章1が,織りネーム(衿ネーム)に標章2が付されたママコートの品番S2071の在庫品を,平成16年9月に譲渡した。

上記の事実は,甲第9号証(売上伝票及び売上台帳),第26号証(2003AWシーズンママコート企画書),第27号証(2003AWママコート資材明細表)及び第28号証(請求書及び受領書)により,明らかに認められるところである。

6 標章1,2と本件商標との同一性について

標章1,2は,いずれも本件商標と社会通念上同一というべきものである。標章2について,被告は,商標法50条1項にいう「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」とは到底いえず,「モンビービー」のような「モンベベ」以外の称呼も生ずることになるので,本件商標とは社会通念上同一とはいえない旨主張する。

しかし,商標法50条1項は,社会通念上同一と認められる商標として,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変換するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」及び「外観において同視される図形からなる商標」を例示しているところ,一般人からみてアクサンテギュの有無によって同一性が失われることはなく,標章2は「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ないしそれに準ずるものとして本件商標と社会通念上同一というべきである。また,一般人からみて標章2から生ずる称呼は「モンベベ」のみであり(なお,織りネームの製造会社も「モンベベ」と呼んでいる。甲第32,第33号証参照),標章2は本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるというべきである。標章2は,商標法の例示する「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変換するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」より以上に本件商標に近似するものであり,本件商標と社会通念上同一であることは明らかである。なお,標章1については,被告も,審判手続及び本件訴訟を通じて,本件商標と社会通念上同一であることを争っていない。

7 ママコートと指定商品「洋服」「コート」について

(1) 原告の販売に係る「ママコート」は,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属するものである。

(2) 「ママコート」一般と指定商品「洋服」「コート」

被告は,「ママコート」は,指定商品「洋服」「コート」に含まれない特殊な商品である旨主張する。

しかし,「ママコート」は,母親が子供を抱いたり背負ったりしたまま着ることができるコートの一般的な名称であり,コートの一種であるから一般に「ママコート」と呼ばれているのであって,「ママコート」が「コート」に該当することは明らかである。また,「コート」が「洋服」の一種類であることも明らかであるから,「ママコート」が「洋服」に該当することも明らかである。

「ママコート」という名称が日本の取引者や需要者が一般的に使用する少なくとも通称であることは,本件訴訟に証拠として提出された各種取引書類等(甲第9号証,第15ないし第17号証,第19号証,第20号証,第26号証,第27号証,乙第4号証等)に「ママコート」という名称が使用されていることなどに照らし,明らかである。

(3) 原告製品と「洋服」「コート」

原告の販売に係るママコートには袖のあるコートタイプ(たとえば品番T2061,T2062,T2063,T2364,S2071)と袖のないベストタイプ(たとえば品番S5960)がある。

このうち袖のあるコートタイプのものは,付属する別体のダッカーを付けることにより子供を抱いたり背負ったりしたまま着ることができるものであり(甲第3号証の3等の下げタグの内面の商品説明,甲第40号証添付の写真等参照),上記のような一般的な「ママコート」に該当し,「洋服」「コート」に該当することは明らかである。

さらに,原告製品は,別体の付属のダッカーを取り付けない場合は,何ら一般のコートと変わらない。しかも,ダッカーは別体である上に原告製品を掛けるハンガーのズボン吊るしに掛けられ外から見えない状態で販売されており,商品の外見上はコートとしか見えない(甲第23号証,第26号証等参照)。このように原告製品は一般のコートとしての性格を有するものであり,「洋服」「コート」に該当することは明らかである。なお,原告製品において一般のコートとしての使用が通常の使用態様の一つであることは,下げタグの内面(甲第3号証の3,第29号証,第37号証の1等参照)に「3通りの着用方法があります」,「ダッカーを取り外しコートとして着用できます」との使用方法の説明がされていることからも明らかである。

次に,原告製品のうち袖のないベストタイプのものは,コートタイプのものと同様に,付属する別体のダッカーを付けることにより子供を抱いたり背負ったりしたまま着ることができるものであり(甲第3号証の3等の下げタグの内面の商品説明,甲第14号証添付の写真等参照。なお,審決(審決書9頁34行~38行)も「該商品も,ダッカーと呼ばれる着脱が可能なようにファスナーが取り付けられた供布を本体に取り付けることによって見頃の幅を大きくして着用することができるものであり,主として赤ちゃんをおぶったり抱いたりする際に赤ちゃんの上から羽織って着用するための防寒用の衣服と認められる」と認定している。),ダッカーを取り付けない場合は一般のベストと変わりはなく,一方,ダッカーを取り付けた場合も身頃が拡がるだけでベストであることに変わりはなく,少なくともベストとして「洋服」に該当することは明らかである。

以上のとおり,原告製品が,「洋服」及び「コート」に該当することは明らかである。

第4 被告の反論の要旨

審決の認定判断に誤りはなく,審決を取り消すべき理由はない。

1 商標法2条3項2号の使用の事実について

(1) 原告は,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者ないし商標権者である原告によってママコートに本件商標が使用されていたと主張する。しかし,原告が平成17年1月18日以前に本件商標についての通常使用権者であったことは認めるにしても,本件訴訟において追加提出された証拠を含めても,本件審判請求登録前3年以内に原告によって本件商標が使用されていた事実を認めることはできない。

(2) 原告提出の写真(甲第3号証,第8号証,第23号証,第31号証)は,すべて本件審判請求登録の後に撮影されたものであり,売上伝票・納品書(甲第4号証,第9号証,第20号証)には,本件商標が記載されていない。また,事実実験公正証書(甲第34号証)において日付を確認できるものは,段ボール箱の外側に押印されたゴム印の日付だけであり,ゴム印が押印されたシール部分をはがして貼り直された痕跡がないか,あるいはテープをはがして一度きれいにはがして梱包し直された痕跡がないか等につき,より慎重な検証が必要であるところ,当該事実実験公正証書には外観を観察しての簡単な状況しか説明されていない。

(3) 本件訴訟では,本件審判請求登録前3年以内に撮影された売場の写真といった客観的な証拠は提出されておらず,原告主張の本件商標の使用事実は認められない。

2 標章1,2と本件商標との同一性について

(1) 標章1が本件商標と社会通念上同一であることは認めるが,標章2は,本件商標と社会通念上同一ということはできない。

(2) 本件商標は,フランス語で「私の赤ちゃん」を意味する「MONBEBE」(Eにはアクサンテギュが付されている。)の文字からなり,「モンベベ」の称呼しか生じないところ,標章2は「Mon Bebe」を筆記体英文字により書したものであり,「e」に「アクサンテギュ」が付されていない。標章2は,商標法50条1項にいう「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」に該当するとは到底いうことができず,「モンビービー」のような「モンベベ」以外の称呼も生ずることになる大きな変更を加えたものであることは明らかである。

また,標章2は衿ネームに係るものであるところ,「アクサンテギュ」が刺繍できない事情はない。原告の別商品(乙第1号証参照)では,衿ネーム及び台紙の双方とも「e」に「アクサンテギュ」を付して書体を統一させており,下げタグに係る標章1の「e」から「アクサンテギュ」を削除し,かつ,書体まで変更した標章2を衿ネームに刺繍しなければならない事情は存在しない。

上記によれば,標章2を本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。

3 ママコートと指定商品「洋服」「コート」について

(1) 原告の商品「ママコート」は,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属さない,特殊な商品である。

審決においては,原告の商品「ママコート」は,ダッカーと呼ばれる着脱が可能なようにファスナーが取り付けられた供布を本体に取り付けることにより見頃の幅を大きくして着用することができるものであり,主として赤ちゃんをおぶったり抱いたりする際に赤ちゃんの上から羽織って着用するための防寒用の衣服であると認定されている(審決書9頁34行~38行)。特に,「下げタグ」(甲第3号証の3)において「ママコートの下に必ず子守帯をご着用下さい」との注意書きが付されるほど「子守帯」と密接不可分な関係にあるものであり,背中部分に配置された供布を取り付けるためのファスナーをはずせばばらばらに分解される「子守帯」だけでは冬場の外出に適さないために案出された「子守帯」の付属品ともいうべき特殊な商品である。

(2) 原告は「ママコート」を昭和60年から販売していると主張しているところ,仮に「ママコート」が「洋服,コート」に含まれる商品として把握されているのであれば,1998年発行の「新・田中千代服飾事典」(乙第2号証)のような服飾に関する専門書には当然掲載されているはずであるが,同事典には,「マ」行の項目はもちろん,「コート」の項目にも掲載されておらず,他に関連ページも見当たらない。また,甲第9号証の納品書(乙第3号証参照),甲第20号証の納品伝票からもうかがえるように,販売ルートも「ベビー用品」を取り扱っている部署に限られている。原告が複数の百貨店に電話で問い合わせた結果でも,ベビー用品売場で取り扱っている百貨店はあるものの,婦人服売場で取り扱っている百貨店はなかった。ウェブサイト(乙第4号証)においても,一般の「コート」が「ファッション」の「アパレル」に分類されるのに対し,「ママコート」は「ベビー用品」の「外出,移動用品」に分類されている。すなわち,一般の「洋服,コート」の需要者が「ベービー用品専門店」あるいは「ベビー用品売り場」に一般の「洋服,コート」を買い求めることはあり得ず,また一般の「洋服,コート」は「子守帯」をした上から着用できるような性質のものではなく,「ママコート」を購入するのは「子守帯」をしたまま冬場に外出を希望する特殊事情を有する少数の需要者層である。上記のとおり,販売部門,用途,需要者を異にする「ママコート」が,「洋服,コート」に含まれないことは明らかである。

(3) 仮に,一般に「ママコート」と呼ばれる商品が「洋服,コート」に含まれるとしても,原告の「ママコート」は,明らかに「下げタグ」(甲第3号証の3)で「ママコートの下に必ず子守帯をご着用下さい」との注意書きが付され,背中部分に配置された供布を取り付けるためのファスナーをはずせばばらばらに分解される極めて特殊な商品であり,「子守帯」の付属品として分類されることはあっても,「洋服,コート」に分類されないことは明らかである。

当裁判所の判断

原告は,本件商標については,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者ないし商標権者である原告により,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属する商品につき,商標法2条3項2号に掲げられた商標の使用がされていたものであり,当該事実が認められないとした審決には,事実認定を誤った違法があると主張する。そこで,以下,順次,検討する。

1 商標法2条3項2号の使用について

(1) 甲第6号証及び弁論の全趣旨によれば,本件商標については,当初,原告の代表者を務めるA が商標権者であったが,同人は,本件商標の商標権を原告に譲渡し,平成17年1月18日にその旨の登録がされたこと,同日以前においては,原告は前記A から本件商標をその指定商品に使用する通常使用権の許諾を受けていたことが認められる(このことは,審決も認定し,被告も争っていない。)。

(2) 原告は,本件審判請求登録前3年以内における本件商標の使用として,①2002年秋冬におけるママコートについての本件商標の使用,②2004年秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2063及びT2364についての本件商標の使用,③2004年秋冬シーズン用ママコートの品番S5960についての本件商標の使用,④ママコートの品番S2071についての平成16年における本件商標の使用を主張するところ,事案にかんがみ,まず,2004年秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2063及びT2364についての本件商標の使用(上記②)について検討する。

(3) 甲第15号証は,原告従業員作成に係る「2004AWシーズンママコート企画書」と題する書面であるところ,これによれば,2004年秋冬シーズン用「ママコート」のなかに,品番T2061,T2062,T2063及びT2364の商品が含まれており,原告において,2004年秋冬シーズン用商品として,品番T2061,T2062,T2063及びT2364のママコートを企画したことが認められる。

甲第16号証は,原告従業員作成に係る「2004AWママコート資材明細表」と題する書面であり,甲第18号証は,YKKファスニングプロダクツ販売株式会社から株式会社ヤギに宛てた織りネーム(衿ネーム)等の納品書であるが,これらによれば,品番T2061の商品(商品名「マイクロピーチママコート」)につき合計446枚,品番T2062の商品(商品名「ゾゾテックダッフルママコート」)につき422枚,品番T2063の商品(商品名「リオデダウンママコート」)につき124枚,品番T2364の商品(商品名「ピンヘッドシャンブレー」)につき84枚,それぞれ「モンベベ」の織りネーム(衿ネーム)の作成がYKKファスニングプロダクツ販売株式会社に発注され,これらの織りネーム(衿ネーム)が平成16年6月15日から7月22日の間に納入されていることが認められる。

甲第19号証は,笹徳印刷株式会社から原告に宛てた納品書及び請求書であるが,これによれば,笹徳印刷株式会社から原告に,平成16年7月1日に「ママコート下げ札」1万枚が納入されていることが認められる。甲第17号証は,株式会社ヤギから原告宛ての請求書及びこれに対応した湖北美春服装有限公司作成のパッキングリストの写しであるが,これによれば,原告は株式会社ヤギに「ママコート」の製造を委託し,平成16年8月から同年10月までの間に,品番T2061の商品合計427枚,品番T2062の商品合計339枚,品番T2063の商品合計119枚,品番T2364の商品合計78枚が,株式会社ヤギの再委託先(下請け)である中国の製造会社(湖北美春服装有限公司)から我が国に出荷されたことが認められる。

甲第20号証は,原告から販売会社宛ての納入書控え,売上伝票及び納品書であるが,これらによれば,平成16年9月から12月にかけて,原告が,品番T2061,T2062,T2063及びT2364のママコートを各地の販売会社に対して販売したことが認められる。

(4) 甲第34号証は,岐阜地方法務局所属公証人鈴木規夫作成の平成18年5月2日付け(平成18年第199号)事実実験公正証書(以下「本件公正証書」という。)であるが,同公正証書は,「倉庫に保管中の在庫品の保管状況と在庫品に商標が付されている事実の存否及びその状況に関する事実実験公正証書」と題され,その第1条(嘱託の趣旨)によれば,原告において,その倉庫に平成16年(2004年)製造のママコートが中国から輸入されてきた状態のまま未開包の段ボール箱に入った状態で一部在庫として残っていることが判明したことから,同公証人に,本件訴訟における本件商標の使用の事実の立証に資するため,同倉庫に立会いの上,同段ボール箱が未開包である状況,同段ボール箱に付されている契約番号及び日付の入った中国工場の検品・検針済みシール等の状況及び同段ボール箱を開包して在中のママコートの織りネーム(衿ネーム)と下げタグ(下げ札)に本件商標が付されている状況等を目撃してもらい,その事実を実験した状況について,これを録取した公正証書の作成を嘱託したものである。

本件公正証書によれば,①倉庫には,品番T2061,T2062,T2063及びT2364のママコートの入った段ボール箱が通常の在庫商品として保管されていたところ,T2062以外の段ボール箱は,その梱包の状況,帯及び段ボール箱に印字された文字,記入された文字の状況に照らし,梱包時のまま保管されていたもので,梱包後何らかの作為を加えた可能性は認められず,T2062の段ボール箱についても,上部の一部が開口していたが,その開口部からママコートの出し入れをすることは困難なものであったこと,②上記各段ボール箱にはいずれも「YAGI」の印字がされており,そのなかに収納されていた品番T2061,T2062,T2063及びT2364のママコートには,いずれも標章2の織りネーム(衿ネーム)が付され,標章1の付された下げタグ(下げ札)が下げられていたこと,③上記各段ボール箱には,いずれも「上海愛恩M&N 倉儲有限公司SHANGHAI M&N TOTAL LOGISTIC CO.,LTD. 検品・検針済責任者」と印字のある青色ラベルが貼付され,これには赤色の押印があるところ,このうち品番T2061の段ボール箱の押印は上段に「検査済」,中段に「2004.9.04」,下段に「上海」等の文字が読み取ることができ,品番T2062の段ボール箱の押印は上段に「検査済」,中段に「2004.9.01」,下段に「上海」等の文字が読み取ることができ,品番T2364の段ボール箱の押印は上段に「検査済」,中段に一部不明文字と末尾「4」及び「8.13」,下段に「上海」等の文字が読み取ることができ,品番T2063の段ボール箱の押印は上段に「検査済」,中段に判読不能の文字に挟まれて中央部に「8」,下段に「上海」等の文字が読み取ることができたこと,が認められる。

(5) 上記(3)(4)記載の各認定事実によれば,甲第34号証(事実実験公正証書)に記載されている原告倉庫に保管されていた段ボール箱は,株式会社ヤギの再委託先の中国の製造会社から平成16年8月ないし9月に我が国に出荷された原告の2004年秋冬シーズン用「ママコート」の一部と認められるから,2004年秋冬シーズン用「ママコート」として,原告が平成16年9月から同年12月にかけて我が国において販売した,2004年秋冬シーズン用「ママコート」品番T2061,T2062,T2063及びT2364の各商品には,標章2の織りネーム(衿ネーム)が付され,標章1の付された下げタグ(下げ札)が下げられていたものと認めるのが相当である。

2 標章1,2と本件商標との同一性について

(1) 標章1,2のうち,標章1は,本件商標と比較すると,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」と認められるから,本件商標と社会通念上同一というべきである(このことは,審決も認定しており,被告も争っていない。)。

(2) そうすると,標章2を本件商標と社会通念上同一ということができるかどうかはひとまずおくとして,原告は,上記各商品に本件商標と社会通念上同一の商標である標章1を付して販売したものと認められる。

3 ママコートと指定商品「洋服」「コート」について

(1) 被告は,原告の販売した上記各商品が取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属するものであることを争っているので,この点につき検討する。

(2) 原告の販売に係るママコートには袖のあるタイプと袖のないタイプがあるところ,上記の品番T2061,T2062,T2063及びT2364の各商品は,いずれも袖のあるタイプである。

これらの商品に付された下げタグ(下げ札)の内面(甲第3号証の3,第29号証,第37号証の1)には,使用方法の説明がされており,そこには「3通りの着用方法があります」,「ダッカーを取り外しコートとして着用できます」との記載がある。また,これらの商品の形状をみるに,甲第15号証,第23号証及び第40号証によれば,これらの商品にはダッカーが付属するものであり,ダッカーをファスナーでコート本体の前又は後ろに取り付けた場合にはコート本体の身頃が拡がるが,ダッカーを取り付けない場合には通常の身頃となり,普通のコートとして着用することができるものである。

(3) 上記によれば,原告の販売に係る品番T2061,T2062,T2063及びT2364の各ママコートは,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属するものと認めるのが相当である。

4 結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件商標については,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者である原告により,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」「コート」に属する商品につき,商標法2条3項2号に掲げられた商標の使用がされていたものと認められる。上記使用を認められないとした審決の判断には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響することは明らかであるから,審決は取消しを免れない。

よって,主文のとおり判決する。

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