知財高裁による審決取消訴訟の判決をピックアップして掲載しています 

平成17年(行ケ)第10497号 審判請求書却下決定取消請求事件


主文

特許庁が訂正2005-39044号事件について平成17年4月26日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

主文と同旨

第2 当事者間に争いがない事実

1 特許庁における手続の経緯

(1) 原告(本件の却下決定における請求人の表示欄には,「村ずみ工業株式会社」と記載されているが,記録中の原告提出に係る商業登記簿謄本の記載に照らし,原告の名称は,正しくは「村角工業株式会社」であると認める。)は,考案の名称を「医療検査用カセット」とする実用新案登録第2547410号〔平成2年11月8日出願(実願平2-117934号),平成9年5月23日設定登録。以下「本件実用新案登録」という。)〕の実用新案権を有していた。

本件実用新案登録については,平成15年10月24日,特許庁にこれを無効とすることについて審判請求がされた。特許庁は,同請求を無効2003-35440号事件として審理した上,平成16年5月11日,本件実用新案登録を無効とする審決をした。

(2) 原告は,平成16年6月12日,上記審決を不服として,東京高等裁判所にその取消しを求める審決取消請求訴訟を提起したが,同裁判所は,同年12月27日,原告の請求を棄却する判決をした。原告は,平成17年1月8日,上記棄却判決を不服として,最高裁判所に上告受理申立てをしたが,同裁判所は,同年4月19日,不受理の決定をし,これにより,東京高等裁判所の上記棄却判決が確定した。

(3) 原告は,上記の上告受理申立て後である平成17年3月9日,本件実用新案登録の出願の願書に添付した明細書を訂正することについて審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求をした。特許庁は,同請求を訂正2005-39044号事件として受理した上,審判長において,同年4月26日,「本件審判の請求書を却下する。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は同年5月11日原告に送達された。

2 本件決定の理由

本件決定の理由は,別添決定謄本写し記載のとおりであり,その要旨は,本件実用新案登録を無効とする審決の確定により,同登録に係る実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされ,したがって,本件訂正審判の請求は,その目的を失い,不適法になると解されるから,本件訂正審判の請求は,実用新案法41条〔注,平成5年法律第26号(以下「平成5年改正法」という。)による改正前の実用新案法41条(平成15年法律第47号による改正後の平成5年改正法附則4条2項の規定により読み替えられたもの。以下「旧実用新案法41条」という。)の趣旨であると解される。〕で準用する特許法135条の規定により,却下すべきである,というものである。

第3 当事者の主張

1 原告主張の審決取消事由

(1) 本件決定は,旧実用新案法41条で準用する特許法135条の規定に基づいて,本件訂正審判の請求書を却下したものである。しかしながら,同法135条は,審判の請求が不適法である場合には,審決をもってこれを却下することができる旨定めた規定であって,審判長が審判の請求書を却下することを認めた規定ではない。

旧実用新案法41条が準用する平成15年法律第47号による改正後の特許法(以下「平成15年改正特許法」という。)133条3項は,審判長が審判の請求書を却下できる場合を規定しているが,その却下が認められるのは,審判の請求書が同法131条の規定に違反しているとしてその補正を命じたにもかかわらず,請求人が指定した期間内にその補正をしないとき,又はその補正が同法131条の2第1項の規定に違反するときに限られている。ところが,本件決定に際して,審判長は,請求人である原告に対し,何ら補正を命じていない。

しかも,本件決定は,本件訂正審判の請求書が旧実用新案法41条で準用する平成15年改正特許法131条,131条の2第1項の規定に違反することを理由にされたものではない。

(2) 以上のとおり,本件決定は,審判長が,法的根拠に基づかないでしたものであり,違法であるから,取り消されるべきである。

2 被告の主張

原告主張の取消事由については争う。

当裁判所の判断

1 原告主張の取消事由について

本件決定は,前記第2の2に記載のとおり,本件訂正審判の請求は,その目的を失い,不適法になると解されるから,本件訂正審判の請求は,旧実用新案法41条で準用する特許法135条の規定により,却下すべきであるとして,本件審判の請求書を却下したものである。

しかしながら,同法135条は,不適法な審判の請求であって,その補正をすることができないものについては,審決をもってこれを却下することができる旨規定しているものであって,審判長が,審決の手続を経ずに,決定で審判の請求書を却下することができる旨規定しているものではない。

旧実用新案法41条で準用する平成15改正特許法133条によれば,審判長は,請求書が同法131条(注,旧実用新案法41条により平成5年改正法による改正前の実用新案法39条1項の審判に準用されている。)の規定に違反しているときは,請求人に対し,相当の期間を指定して,請求書について補正をすべきことを命じなければならず(平成15年改正特許法133条1項),その補正をすべきことを命じた者が,指定した期間内に補正をしないとき,又はその補正が同法131条の2第1項の規定に違反するときは,決定をもってその請求書を却下することができる旨規定されている(同法133条3項)。しかし,このように審判長の単独の権限にゆだねられたのは,審判請求書の必要的記載事項,訂正審判請求の場合に添付すべき明細書等など,審理する内容が形式的で簡単な事項であるということに基づくものであって,審判長において,審判の請求が不適法であることを理由に,同法133条3項の規定に基づいて審判の請求書を却下することができるものでないことは,上記規定の要件に照らし,明らかである。

他に,審判の請求が不適法な場合に,審判長において,審判の請求書を却下することができることを認めた法律の規定は存在しない。

したがって,本件決定は,審判長が,法律上の根拠なくしたものであり,違法といわざるを得ない。

2 以上の次第で,原告主張の取消事由は理由があり,本件決定は取消しを免れない。

よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。

閉じる